接吻とフレンド (ページ25)

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見慣れたドアを開いて

出てきた彼女の目が真っ赤なのは、きっと花粉のせいだけではないだろう。

目が潤んでいるのは、多分痒くて擦ったからじゃない。

「...なんで言わねえの。」

『っ、あら、んく...』

俺のパーカーに、Aちゃんの涙が染みていくのが見えた。

握り締められた腕が、心が、痛む。

「頼ってよ。」

白い雪のような腕を引いて、震える肩を強く抱き締めた。

細い、細くなった。

Aちゃんは、柔らかい女の子らしさの中に芯のある強さを持っているのを、俺は知っていた。

別れたはずの美勇人くんといれるのも、その強さのおかげだったのかもしれない。

そんな彼女がここまでボロボロになるほどで。

俺が気付いてあげれば良かった。

やっぱり会いに来れば良かった。

美勇人くんは、幸せの為にこの選択をしたのだろう。

それは、自分の幸せだけではなく、Aちゃんへのあげる幸せも含めて。

美勇人くん、抜けがけなんて言わないでよ。

Aちゃんを置いていったのは、美勇人くんだから。

「Aちゃん、こっち見て。」

『やだ...やだ、ぶさいくだもん、』

「ブスじゃねえから。」

ふわふわと柔らかいAちゃんの頬を包んで顔を上げると、まだ濡れた瞳と目が合った。

わんわん泣きじゃくって、子供みたい。

あーあ、死ぬほど可愛い。

「俺なら、...俺はもっと幸せをあげる。ちょっとも悲しい思いなんてさせない。」

じわりとまた涙が滲んでいるのが、はっきりと分かった。

嗚呼、人間ってこうやって泣くんだ。

こんな綺麗に、涙を流すんだ。

「付き合お、俺と。」

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