接吻とフレンド (ページ16)

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悪魔ページ16

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『みゅーと、起きて？っきゃ、』

ゆさゆさと揺らして俺を起こすAの手を強く引いて、Aを腕の中にしまい込む。

今はいないはずの顕嵐に、奪われないように。

夕日がちょうど差し込んで、頬にまつ毛の影が落ちて、そしてその下に柔らかい唇が見えた。

顕嵐が触れた唇、顕嵐とキスした唇。

ムカつく。

『待って、今ね、あら「知ってる、顕嵐荷物取りに帰ったんでしょ。」

「三人でお泊まり。俺が起きたら夜ご飯食べるんでしょ。」

『起きてたの？』

「うん、全部見てた。」

『何で止めなかったの？』

「別に止める権利、ないし。」

それは、事実。

本当は今すぐにでも起き上がって、何してんのって二人の間に入って、顕嵐がAに触れるのを止めてやりたかった。

顕嵐はかっこいいから、少し諦め始めていた俺だけど、実際に顕嵐がAに触れてるところを見たら、そうともいかなくなった。

想像以上の嫉妬と、悔しさと、寂しさが俺を支配して苦しめる。

嗚呼、俺って、こんなにAが好きだったんだ。

「...俺、何でAと別れたんだろ。」

『仕方ないよ、仕方なかった。私はもう大丈夫だよ。』

大きなステージの上でミスをした時、何百人ものお客さんの前でスベった時、俺は幾度となく自分のことを恨んできた。

そんなものとは比にならないくらい、俺は今、ありえないほど俺を恨んで、殺したいと思っていた。

Aに別れを告げたのは、俺だから。

「ごめん、A、ほんと、おれ、」

『いいんだよ。やだったよね、さっき。私もごめん。』

『顕嵐くん、確かちょっとここから家遠いよね。あと三十分くらい帰ってこないかなぁ。』

『みゅーと、キス、したい。』

そうやって、甘い言葉で俺を誘うAはきっと悪魔。

Aの唇から顕嵐の影なんて消し去るように、俺はAに口付けた。

緩く、でも深く繋がれた二人のこの手は、永遠に離れることはないんだって思った。

例えAが顕嵐を好きでも、俺はこうやってAに縛られて死んでいく。

もっと俺を苦しめてよ、A。

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