検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:33,450 hit

Episode119 ページ32

安吾の下で仕事を始めてから、今日で早くも五日。

効果的な相手との取引方法。
信用を得るための手口。
暗号、隠語の種類。

Aは諜報員として必要なことを安吾から学んだ。

とはいえ、変化や不可視化、精神操作の異能を持つAに足りないものは少ない。
そのため、主な時間は書類整理や、取引に行く安吾の護衛兼観察に当てられた。

「安吾さんも大変ですね。この仕事、常に自分を殺さなきゃいけないっていうか。爆発しちゃいそう。」

多くの情報を持つ者の宿命なのだろうが、僅かにでも隙や感情を見せることが命取りになる。
任務中は如何なる『自分』も殺さなくてはならない。

「そうですね、仕事柄、自分を見失って辞めて行った人達も見てきました。」

だから安吾さんは太宰さん達と居るのがあんなにも楽しそうなのか。

あの場所は安吾にとって素の自分を出せる場所なのだろう。
何処かに捌け口がなければ、思いもよらぬところでボロが出てしまう。

「私、お酒やめようかな。」

隙を見せるな、という中也の忠告を思い出す。

「潰れるだけで、妙な事言ったりはしてませんでしたよ?付き合いで飲まなきゃいけない事もありますし、強くなるのが一番なんでしょうけど。」

相手を酔わせて情報を得るのも、一つの手口。
しかしこれでもAはマシになった方なのだ。

「これ以上は……何とも言えないですね。」

「というか、貴方まだ十六でしょう?裏社会にいて未成年飲酒をとやかくは言いませんが、健康に問題ありですよ。」

安吾は呆れたように言う。
そんな会話をしている間も、二人の手はキーボードを軽快に叩き、目は画面を見つめている。

数日の間に、情報処理能力も事務仕事の腕も格段に上がった。

やっぱり私の一番の問題はお酒だな。
大人になれば少しは強くなるのかもしれないけど、そんな何年も待ってられないし。

「いっぱい飲んで耐性つけます。身体鍛えれば少しは強くなるのかも?」

「その脳筋な考えは中原君の影響なんでしょうね。」

安吾の言葉と同時に、Aの携帯が鳴る。
受信欄には偶然にも中也の名前。

『出張行っちまう前に飯でもどうだ?最近の報告も聞きてぇし。』

暫く中也にも会っていない。

楽しみにしてます、と返信し、緩んだ頬で画面に向き直るAに、安吾はまたため息をついた。

Episode120→←Episode118



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
79人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

noel(プロフ) - 星猫さん» いえいえ、ありがとうございます (2020年4月14日 19時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - こちらこそすみませんです;;更新頑張って下さいね。 (2020年4月14日 19時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - 星猫さん» お誘いは凄く嬉しいんですが、今年受験生でして…。コロナのせいで今が暇なだけなので、他の方と合作は厳しそうです。誘っていただいてありがとうございます。すみません!! (2020年4月13日 22時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - あの、私と一緒に合作しませんか? (2020年4月13日 19時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
ぬい(プロフ) - noelさん» うれしいです! 楽しみにしてます (2020年4月11日 14時) (レス) id: 1f95c5a6f6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:noel | 作成日時:2020年4月8日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。