Episode96 ページ48
屋敷の中は騒然としていた。
地下室を飛び出したジェーンの姿が、屋敷の何処にも見当たらないのだ。
使用人達は必死でジェーンを探す。
リチャードはブライアンの帰宅時間が近付くに連れて落ち着きを失っていく。
そして遂にブライアンを乗せた車が屋敷の前に止まった。
「おかえりなさいませ、ボス。」
玄関まで迎えに出たリチャードは必死に平静を装う。
しかし顔面蒼白、声も震えている。
「……何があった?」
リチャードは答えない、いや、答えられない。
額を冷や汗が流れる。
その時、ジェーンがブライアンの前に現れた。
「おかえりなさいませ叔父様!」
満面の笑みでブライアンを迎えるジェーン。
「ただいま、ジェーン。体調は良いのかい?」
ブライアンも上機嫌でジェーンに答える。
「勿論!叔父様に会いたくて、走って帰って来ましたわ。」
そして、ブライアンに抱きついた。
ドスッという鈍い音が鳴る。
先刻迄の笑顔はなりを潜め、感情のない目でブライアンから離れるジェーン。
ブライアンの左胸には、心臓を正確に捉えたナイフが、深々と突き刺さっていた。
リチャードは声も出ない。
「……死ね。」
冷たい声で言い放つジェーン。
しかしブライアンは胸からナイフを引き抜くと、高らかに笑い声をあげた。
ジェーンの表情が引きつる。
「……全く酷いことをしてくれるなぁ。」
笑い声とは裏腹に、怒りを露わにするブライアン。
「残念だけど死なないよ?仕事中は防弾チョッキを着ているんだ。」
確かにブライアンの胸にはナイフが刺さっていたが、その深さは数センチ。
心臓を突き抜くことは出来なかった。
ジェーンの瞳が絶望に染まる。
失敗した。
チャーリーの仇を取れなかった。
もう殺されてしまう。
「捕まえろ。」
ブライアンの命令に、ジェーンはなす術もなく男達によって取り押さえられた。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時