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Episode73 ページ24

「……如何いうつもりだ。テメェら仲間だろ。」

老人は中也に向き直ると、攻撃の意が無いことを見せるために、狐を撃った銃を捨てる。

中也はそれでも警戒を解くことなく、老人の一挙手一投足に注意を払っている。

「小僧、貴様の目的は何じゃ。」

鋭い目付きで中也を見つめる老人。
その凛とした立ち姿は、中也に得体の知れない威圧感を与える。

中也が無言を貫くと、再び老人が口を開く。

「貴様はあの子に何をする気じゃ?」

返答によっては殺すと言わんばかりの眼力。

「あの子…?」

「とぼけるな!…ジェーン、貴様らがAと呼んでおった娘じゃ。」

ジェーン…。それがあいつの本名。
このじじい、Aの過去を知ってやがんのか?

中也の心が乱れる。

頭に浮かぶのはA、と呼ばれて振り向く笑顔。

食事する時の幸せそうな表情。

中也をバカにする時のムカつく笑い方。

初めてのことに声をあげて喜ぶ姿。

記憶に触れた時の不安げな様子。

男の名を呼ぶ涙。

そして、……中也を映す藤色の瞳。

記憶が戻れば、Aが居なくなってしまうかもしれない。
ブライアンというあの男は、Aを遠くへ連れ去ってしまうかもしれない。

中也の様子に、老人は何かを悟ったのか、険しかった表情を解き、ソファに腰掛ける。

「貴様にとってあの子は何だ?」

中也に問いかける口調も、柔らかな物に変わる。

「あいつは、……Aは俺の、」

部下。
それは真実で、一番的確な表現なのだが、中也は何故か、そう言うことができなかった。

老人が助け舟を出すように中也に問う。

「貴様は、あの子を大事に思っとるか?」

「当たり前だ。」

それだけは自信を持って答えることができる。

「問題を起こしたんなら、俺が責任を取る。泣いてるなら俺が慰める。寂しいなら俺がそばにいる。無理矢理拐われたなら、俺が連れ戻す…!」

それはAが部下だからではない。
中也がAを大切に思うから、特別に思うからだ。

老人は中也の顔を真っ直ぐ見つめ、深く頷いた。

「お前にあの子の、……ジェーン・ウォーレスの、全てを話そう。」

老人が告げた名前に、中也の表情が固まる。

その名前は、さっきの男と同じ……!

「私の名はリチャード・ウォーレス。ジェーンの祖父だ。」

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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時

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