Episode67 ページ18
「それで、Aは今何処に居んだよ!」
「港だ。東の方角!」
太宰の携帯でGPSを確認し、すぐさま車を出す。
港へ向かっているということは相手は恐らく船でAを運び出す気だ。
出港されてしまえば手が出せなくなってしまう。
間に合ってくれっ……!
法外のスピードで裏道を駆け抜ける中也。
他の部下達はずっと後ろ。
既に中也の車を見失っていた。
「おえっ……。流石に私も中也の運転で死ぬのは嫌だなぁ。」
後部座席に乗り込んでいたらしい太宰が、文句を垂れる。
「テメェいつの間に!こんな時に贅沢言ってんじゃねぇ!」
狭い路地を右に左に、猛スピードで進んでいく。
車が壁に擦れても、何かにぶつかった音がしても、中也は止まらない。
「そこ右に曲がって直進!」
「俺に指図すんじゃねぇ!」
かどを抜けると目の前は海。
急ブレーキをかけ、なんとか港ギリギリに踏みとどまるとすぐさま車を降りる。
「どの船だ!?」
船の出入りが多い横浜港は、常に沢山の船が停まっている。
GPSでは船まで特定することはできない。
神島の存在を考えると、目撃情報にも頼ることができない。
片っ端から船に乗り込むしかねぇのか!
「待て、中也。……アレだ!」
考え無しに突っ込もうとする中也を留め、辺りを観察した太宰が指さしたのは一際大きな客船。
アルファベットで船体に刻ませた船名。
周りにちらほら見えるのは怪しい黒服に身を包んだ異国の者。
船頭には金でできた蛇のエンブレム。
太宰の横を中也が風のように駆ける。
「レディ一人の迎えに豪華客船とは、派手好きな紳士だねぇ。」
タイミングよく目の前に現れた部下の車。
太宰は運転席に乗り込み、唖然とする部下を置いて発進する。
「中也、乗って!」
車を走らせたまま、助手席のドアを開けると、船に向かって走っていた中也は訳もわからず車に飛び乗った。
「何する気だ!?」
中也の問いに太宰は悪い笑みを浮かべる。
「このまま船に突っ込む。」
「はぁ!?正気かテメェ!」
船にはAが乗っているのだ。
しかし太宰は止まらない。
突っ込んでくる車に気付いた黒服達は蜘蛛の子を散らすように道を開ける。
そして車はそのまま荷物を運び入れるスロープを伝い、船体に突撃した。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時