Episode66 ページ17
倉庫の中には神島はおろか、虫一匹居なかった。
神島は異能を使っていたのではなく、初めからこの場に来てすら居なかったのだ。
姿が見えないのだから、監視カメラでAの行方を辿ることもできない。
「どうすりゃいいんだよ……っ!」
「落ち着け中也。首領の指示でAちゃんにGPSをつけていたんだよ。」
太宰の携帯にはAの現在地が刻まれていた。
森に呼び出された太宰が首領室を訪れたのは、昨夜のことだった。
………………………………………………………
「明日の作戦、勿論君も行ってくれるだろう?」
部屋に入ると、開口一番そう言われた。
「はい。Aちゃんには本部で待っていて貰う予定です。」
「彼女にはここに居て貰おう。私が監視をして護衛もつける。」
その言葉に太宰が珍しく、少し驚いた表情を見せる。
森は普段通り手を組んだまま、その笑みからは中々真意が読み取れない。
「首領の好みは十二歳迄では?どうしてそこまで彼女に執着するんですか。」
Aが倒れた時も、わざわざ病室まで足を運び、紅葉に入っていた仕事を太宰に回してまで、Aの安全を確保した。
明らかにAに対して特別措置を取っている。
「彼女は可愛いからねぇ。エリスちゃんも懐いてるようだし。」
笑っているが、どうも本心には見えない。
太宰が無言で森を見つめると、観念したのか口を開く。
「あんなに良い駒をみすみす手放す訳にはいかない。頭も切れるし腕も良い。あの見た目は任務にもプラスに働くだろう。おまけにあの異能力!」
興奮した森の瞳が暗闇の中、獣のようにギラギラと光る。
駒。
幹部クラスに関してはこの男も多少の情がある。
しかし、他の部下は所詮その程度にしか考えていないのだろう。
「勿論Aちゃんは大切だよ。できることなら望んでこの組織にいて欲しい。彼女には傷ついて欲しくないからね。」
それはつまり、望まなくても無理矢理繋ぎ止めるという事。
だから気絶したAの様子を見に来たのか。
記憶を取り戻した彼女は自ら向こうに行ってしまうかもしれない。
「敵は泳がせれば必ず拠点へ帰る。徹底的に潰さなければ。私も二度三度と手間はかけたくない。」
……神島のことか。
太宰自身、神島を根本から信用することは出来なかった。
森には恐らくこれから起こる全てが読めているのだろう。
「奴らにわからせてやろうじゃないか、彼女はもう我が組織のもの。その為にも……頼んだよ?」
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時