検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:43,849 hit

Episode61 ページ12

この状況は……。

中也は現在、頭を抱えていた。

二人とも風呂から上がり、いざ寝るとなって問題が生じた。

俺の部屋で寝ろ、と中也は言ったものの、寝室にはキングサイズのベッドが一つ。

一先ずAだけベッドに寝かせると、寝付きが悪いと悩んでいた割にはすぐに眠りについた。

人が側にいると落ち着くようで、中也の手を握ったまま眠っている。

「俺もそろそろ寝ねぇと、さすがに三日も寝ずにいるわけにもいかねぇしな。」

三日後の相手は英国最強。
万全の体調で臨まなければ流石の中也もどうなるかわからない。

リビングのソファで寝ようと思ったが、眠っていると余計に幼く見えるあどけない寝顔に、手を離すことが躊躇われる。

「仕方ねぇか。」

諦めてAの身体を少し端に寄せ、中也もベッドに潜り込む。

手は繋がれたまま、Aが少し身じろぐと普段のAとは異なる、中也と同じ匂いがする。

時々苦しそうに呻くAを、衝動的に抱きしめる。
すると少し表情も和らぎ、擦り寄ってくる。

「……本当に子供みてぇだな。」

「…ち……ゃ…。」

何かを呟くA。

寝言か?

次の瞬間、Aは閉じられた瞳からポロポロと涙を流す。

突然のことに動揺する中也だが、どうすることもできない。

「……Ch…ie…」

誰かを呼んでいるようだ。

握り締められた手に、中也はAの背中に手を当て、小さな子供をあやすように摩る。

「…Charlie, Charlie……My……dear.」

『愛しのチャーリー』

その名前を呟きながら、Aの頬を絶え間なく涙が伝う。

チャーリー……。
夢に出てきたガキか。

中也の腕の中で、涙ながらに別の男の名前を呼ぶ。

「誰だよ、そいつ……。」

きっと、起きてもAに夢の記憶はないのだろう。

その記憶がいつのものなのかわからない。
男がまだ生きているのか、生きているならどこにいるのか、幾つなのか。

思い出したらこいつは……。

その男の元へ行ってしまうのか。
咄嗟に浮かんだその考えと、固く噛みしめられた唇に気付く。

こいつが求めてるのは俺じゃねぇ。

その事が嫌に頭を悩ませた。

Episode62→←Episode60



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (34 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。