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Episode59 ページ9

神島に合わせて欲しい。
その要望に、太宰は再びAを地下へ案内した。

神島は先日よりも精神状態が回復しているようだ。
牢獄に繋がれているとはいえ、実体のないままで悲鳴の響く繭の中に閉じ込められるよりマシだ。

「神島さん、取引しませんか?応じてくれれば、貴方を解放します。」

信用できないといった表情をする神島。
しかし、断れば良くて一生檻の中、最悪殺される。
選択肢などなかった。

神島の無言を肯定と捉え、取引内容を語り出すA。

「私の情報を渡します。それを持ってアジトへ戻り、組織と接触してください。」

神島の異能力は【潮騒】
自分の姿、音を消すという、なんとも暗殺、諜報員向きの能力だ。
その能力ならば、捕まったが、見事情報を盗んで逃げ出した、と言っても怪しまれないだろう。

「悪くない取引でしょう?」

「…乗ってやろう。」

Aは満足げに笑った。

………………………………………………………

「巫山戯んな!」

部屋に中也の怒声が響く。

神島との取引は、Aが太宰に相談し、中也には内緒で行われたものだった。

「自分を餌に敵をおびき寄せるなんて冗談じゃねぇ!相手は英国最大の組織だぞ!?」

中也に話せば反対されることなどわかりきっている。
だから黙っていた。

「敵地に乗り込んで行くより、相手も手が出しにくいはずです。そうする以外にないじゃないですか。」

冷静に返答するA。
しかし中也の怒りは収まらない。

「何で俺に一言も言わなかったんだよ!」

「言ったら取引させなかったでしょう!?」

「当たり前だ!」

中也との衝突は初めてのことだった。
互いに一歩も引かず、火花を散らして睨み合う。

しかし既に取引は成立し、森にも報告が済んでいる。
終わったことで口論をしてもしょうがない。
中也にもその事はわかっていた。

「チッ。お前は部屋を出るんじゃねぇぞ。」

「嫌です。自分の事くらい自分でケリをつけます。」

再び反抗するAに、今度は中也も本気でキレた。

無表情のまま、Aに詰め寄る中也。
手首を掴まれ、壁と中也に挟まれる。
逃げ場はなかった。

中也の蒼い瞳がAを捉えて離さない。

「……二度は言わねぇ。テメェは俺の部下だ。命令が聞けねぇなら、無理矢理でも監 禁するぞ。」

至近距離で上から睨まれ、流石にAも黙る。
先程までと違い静かな口調。
しかし声には有無を言わせぬ圧力があった。






「お前は絶対渡さねぇ。」

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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時

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