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Episode76 ページ27

「ジェーン、お母様は街へ買い物に行ってくるから、いつもみたいにチャーリーの事よろしくね?」

「ええ、大丈夫よ。いってらっしゃいお母様。」

そう言って母親の頬に口付けし、車を見送る。

月に一度、母親は食料などを買いに車で街に出る。
野菜や果物など、多少の物は家の裏で栽培しているのだが、パンや洋服も含め、まかなえない物はある。

ジェーンは既に十一歳。
半日程度なら弟と二人で留守番することもできるようになっていた。

「うぇーん。」

家の中からチャーリーの泣き声が聞こえ、ジェーンは慌てて家の中に入る。

「チャーリー、どうしたの?ネズミでも出た?」

「うぇーん。」

ジェーンが尋ねても泣きじゃくるチャーリー。
寝ていたシーツが濡れている。

「そう、おねしょしたのね。大丈夫よ、すぐ洗濯するわ。ねぇ様と一緒にお風呂に入りましょう?」

チャーリーは七歳、一般的には寝る度におねしょをして泣くような年齢ではない。

チャーリーの精神的な発達が遅れていると気づいたのは、もう四年程前。
三歳になっても、うまく言葉が文章にならない。
いつも突然、訳もなく泣き出してしまう。

それでもジェーンはチャーリーに優しく言葉を教え、泣いているチャーリーを笑わせようと努めた。
母親も二人に等しく愛情をそそぎ、チャーリーは伸び伸びと成長した。

チャーリーとお風呂に入り、洗い終えたシーツを庭に干す。
チャーリーはジェーンの近くで遊んでいた。

「ねぇさま。」

「なあに?」

両手に何かを持って笑顔でジェーンのもとへ走ってくるチャーリー。

「ねずみ。ぼく、みっけた!」

チャーリーの手の中には一匹の白いネズミ。
ジェーンを見つめる真っ赤な瞳をパチクリさせている。

「やるじゃないチャーリー!綺麗ね。アルビノかしら?」

「ある、びの?」

「そう、アルビノ。」

ジェーンが言うと、チャーリーは繰り返しその言葉を唱える。

「ある、びの、あるびの、ある、じぇーん!あるじぇーんの!あるじゃーのん!」

アルビノとジェーンを繋げてアルジャーノン。
上手く繋げられてはいないが、チャーリーの気持ちが嬉しかった。

「アルジャーノンって名前にするの?」

チャーリーが笑顔で頷く。

「じゃあアルジャーノンにお家を作ってあげなきゃね。」

そう言うとジェーンはチャーリーの手を引いて家の中へ入ろうとした。

すると、坂を登って来る車の音が聞こえてくる。
ジェーンが振り返ると、家の前に一台の車が停車した。

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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時

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