77(Fside) ページ37
「見りゃわかるだろうが。全然戻ってねぇよ。戻ってるように見えるかよ!」
「あれ?おかしいなぁ…効き目はとっくに終わってるはずだけど…」
この頃には猫も諦めたらしく、すっかり落ち着いて、俺に尻尾を掴まれたままフワフワと宙を浮いていた。
「なにわかんねぇこと言ってんだよ!どうでもいいけど、早く元に戻してくんね?」
「ん〜、そう言われてもなぁ…治る方法なんてないんだよなぁ…」
「はぁ?お、おまっ…何言ってんだよ!お前のせいでこんな体になったんだぞ!いっぱいいっぱい、皆の事、苦しめたんだぞ!」
宏光が俺の手をよじ登り、猫の尻尾にしがみ付こうとしている。
「宏光…そんなことしなくても…」
俺が尻尾をくいっと引っ張ると、猫はずるずると俺の方に引っ張られてきた。
「ほら、行け。」
宏光を猫の背中に乗せてやると、宏光は迷わずオッサンに掴みかかった。
「お前が変なもん飲ませたせいで、キスマイは解散の危機だったんだぞ!せっかく太輔と一緒に住めたのに…この体のせいで、俺一回も太輔に抱いて貰えないんだぞ!…あっ…///」
宏光、お前…こんな時に何言って一人で照れてんだ…
「と、とにかく、元に戻して貰わないと困るんだよぉぉ〜!」
最後は泣き落しかよ…
「…仕方ないなぁ…じゃあ…目、瞑って?」
「え?…こ、こう?」
「そう……チュッ」
「へ?」
「お、お前っ!」
こいつ、俺の宏光にキスしやがった!しかも唇っ!
「あ…。…キス…されちゃった?//」
なんで照れてんだよっ!
ぼーっとオッサンを見つめている宏光を慌てて猫から下ろす。
「あっ!」
手が緩んだその一瞬、猫は今だと言わんばかりに空を蹴った。
「あ、お前っ!……うげっ…」
その時一気に空を掛け出した猫を追いかけようとした宏光の顔面に、猫の尻尾が直撃し、宏光は奇妙な声を出してフラフラとその場に倒れ込んだ。
「宏光っ!」
宏光を助けようと手を伸ばした俺の頭を、今度は空飛ぶ猫が思いっきり後ろ足で蹴りあげた。
「あうっ…」
頭の上に…星が飛んでる…
意識を失う瞬間…窓の外に逃げ出した猫とオッサンが、俺達を見つめてニヤリと笑ったのが微かに見えた。
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作者名:MISA | 作成日時:2014年8月31日 9時