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73(Fside) ページ33

数日前に訪れた事務所。

この前は宏光と2人だったが、今日は宏光を覗いた6人だ。





「待ってたよ。」





社長は、この間と同じ優しい笑顔で俺達を迎えてくれた。





「北山は…元気にしてるか?」





俺を見つけると、社長はすぐに宏光の事を聞いてきた。





「今…風邪を引いて、熱出してるんです。今は家で眠ってます。」

「そうか…」





社長は少し悲しい表情を見せた後、





「北山が寂しがるといけないね。早速話を聞こうか。」





とソファに座り、俺達も同じように座るよう促した。





「率直に言います。北山の脱退を取り消して貰えませんか。」





社長は予想していたのだろう。

表情を変える事はなかった。





「キスマイは7人です。6人でなんて無理です。」





玉が真っ直ぐな瞳を社長に向けた。





「俺達、ミツが元に戻るって信じてます。もう少し時間を下さい。」





ニカも自分の想いを伝えようと必死に訴える。





「お願いします、ミツを助けて下さい。」





頭を下げた渉に続き、皆それぞれに「お願いします」と頭を下げた。





「…以前にもこんな事があったね。…あの時は、藤ヶ谷と北山…2人だったかな。あの時も、7人でないとダメなんだと言ってたね。」





社長が俺達を優しい目で見つめながら言った。

デビュー前…俺と北山で7人でデビューさせて欲しいと頭を下げた。




そうだよ、あの時から…キスマイは7人。

それは揺るぎない俺達の想い。





その時、社長の携帯に着信が入る。

「失礼。」と社長が席を立った。





「……おぉ…どうした?…そうか…うん………」





社長が、携帯を耳に当てたままゆっくりと俺達の元に戻ってくる。

そして、唇に人差し指を当てて、静かにするよう促した後、俺達の前で通話をスピーカーに切り替えた。





『俺…元に戻らなかったら、って考えたら…正直…怖いです。』





宏光!?

皆も驚いて、張り上げそうな声を必死で堪えている。





『…でも…キスマイが…無くなってしまう事の方が…怖い…。キスマイが…俺達の…っ…帰る場所…。今のままじゃ…きっと皆…俺を…守る為に…キスマイを捨ててしまう…。それだけは…避けたい…。はぁ…はぁ…だから…その時は…っ…社長が…皆を止めて…。俺じゃ…きっと…皆を止められない…ゴホゴホッ…社長…お願い…』





苦しげに声を絞り出して懇願する宏光。

俺達は皆、声を押し殺して泣いていた。







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作者名:MISA | 作成日時:2014年8月31日 9時

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