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62(Kiside) ページ22

震える体を抱きしめながら、俺は何も出来ずに座り込んでいた。

太輔はああ言ってくれたけど、俺がここにいる限り太輔は自由になれないんだ…


そして、そこで初めて気が付いた。


俺…自分の足でここから出ていくことも出来ないんだ…

太輔の傍から離れれば…俺はもう…生きるすべさえ失ってしまう…

太輔に縋るしか生きて行く方法はないんだ。

太輔は俺を見捨てる事はしないだろう。

それは…一生太輔を縛る事と同じ…

俺は…死ぬことでしか…太輔を自由にしてやれないのか…





体から力が抜けていく。





「ただいま〜。ごめん、宏光。」





玄関から太輔の声。

愛しい太輔の声にも、体は動かなかった。





「え…ちょ、宏光、何やってんの!?」





濡れたまま呆然とする俺を太輔が再びタオルで包む。





「ちょっと、体冷たくなってんじゃん!なんで着替えてないのっ?!」





慌てた太輔が俺のシャツを掴んで脱がそうとする。





「ごめん…」

「…宏光?」

「……こんな俺でごめん…」

「…どうしたの?」

「…俺…太輔の足手まといになりたくない…でも…もう…太輔なしじゃ生きていけないんだ…」





太輔は、冷たくなった俺の体をそっと抱きしめてくれた。





「それでいいんだよ。宏光は…俺が傍にいてずっと守っていく。俺なしじゃ生きていけない宏光にしたかったのは、俺なんだよ…」

「太輔…」

「何も考えなくていい。ただ俺の傍にいてくれれば…それでいいんだ…」

「…ひっ…ふぇっ…」

「ほら、もう泣かないの。このままじゃ風邪引くよ。風呂、入ろう。」





太輔はその後もずっと俺の傍にいて…俺が眠るまでずっと髪を撫でてくれていた。






真夜中にふと目が覚める。

チラリと見た時計は4時。

隣の太輔はぐっすり眠っている。





「…ケホケホッ」





なんだか…寒い…

背中がゾクゾクする嫌な感覚…





「や…ばい…な…」





だんだん息が苦しくなる。





「たい…」





太輔を呼ぼうとして、思わず口を塞いだ。



これ以上太輔に迷惑かけられない。

そうだ…

このまま…死ねたら…太輔も皆も…自由になれる…





「はぁっ…はぁっ…」





次第に熱くなる体と闘いながら、太輔に悟られない様に布団にもぐりこんだ。






.

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作者名:MISA | 作成日時:2014年8月31日 9時

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