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「太輔、いってらっしゃ〜い!」
俺の掌でミツがガヤさんに手を振ってる。
「ガヤさん、いってらっしゃ〜い!」
俺もミツを真似て、ガヤさんに満面の笑顔を向けて手を振った。
ガヤさんは、複雑な感情を隠すことなく歪んだ笑顔を向けて、手を振りながら仕事に出掛けて行った。
今日は、俺は1日オフ。
1日忙しいガヤさんの代わりにミツの相手を買って出た。
だって、ガヤさんばっか良い思いしてズルイでしょ。
これでも俺、結構我慢したんだよ?
「ミツ、朝飯食った?」
「うん。太輔と食ったよ!」
「そっか、じゃあ…どっか行きたいとこある?連れてってあげるよ。」
「ん〜、そうだなぁ…」
結局ミツが悩んで出した答えは、映画館。
人が多い場所は危険だしね、映画館は確かにいいかも。
上演ギリギリに入り、一番後ろの席に座る。
ミツは俺の上着のポケットから顔を出して、じっと映画を見ていた。
「ひっく…ぐすっ…」
「ぐすっ…ズズッ…」
2人で目一杯感動して、号泣して…
美味しいって有名なテイクアウトのお店で、お昼ご飯を買って家に帰った。
「腹減った〜!」
「そうだね。お昼の時間、大分過ぎてるもんね。
テーブルにお昼ご飯を並べて、ミツ用に小さく切り分けていく。
「うまっ!」
「うん、めちゃくちゃ美味い!」
ミツとのデートは楽しくて時間を忘れる。
でも…
「うわ〜、これ太輔にも教えてやろ〜。」
「太輔がさ、この映画すごい良いって言っててさ。」
「太輔、絶対この味好きだよ。」
ミツの口から出るのはガヤさんの事ばかり。
ミツは無意識なんだろうけど…
それが逆に…キツかったりする。
「ミツ…ガヤさんの事、大好きなんだね。」
俺が言うと、
「そ、そんなんじゃねぇよ。…今、ずっと一緒にいるから、つい…」
真っ赤な顔で言われても説得力無いよ、ミツ。
「隠さなくたっていいじゃん。ガヤさんもきっとミツの事大好きだよ。」
「//」
「ミツ…今幸せ?」
「…うん。幸せだよ…//」
俺も…ミツの事が大好きだよ。
でも…大好きだから…俺の気持ちは隠しておくよ。
ミツを本当の笑顔に出来るのは俺じゃない、ガヤさんだから。
ミツの幸せは俺の幸せ。
心からそう思えるんだ。
だから言わない。
その代わり…時々こうして傍にいさせて。
ミツの笑顔を…時々でいいんだ。一人占めさせてね…。
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作者名:MISA | 作成日時:2014年8月31日 9時