５６（Kiside） ページ16
暗闇の中で、太輔の声に向かって必死に叫んだ。
皆、俺の声が聞こえないって…
でも…太輔だけは聞きとってくれた。
「待ってろっ！」
太輔の声が聞こえてすぐ、明るくなった視界。
大きくなった光の中に太輔がいた。
「宏光！」
ずっと聞きたかった太輔の声。
「良かった…」
ずっと触れたかった太輔の温もり。
気付いたら必死で太輔の手にしがみ付いて、号泣してた。
皆も、俺の頭を撫でてくれて…
待ち望んでいた笑顔に、また涙が零れた。
「ふぇっ…ごめっ…なさい…。ひっく…ひくっ…ごめっ…」
「うん。謝んなくて良いから。」
「ひくっ…太輔の指輪が…ひっく…大事でぇ…
スタッフが来て…ヤバいって…ぐすっ…
でも、コロコロってなって…
見つけたのに、バサッって……っ…
怖くて…誰もこなくて…っく…
でも、太輔は分かってて……うわぁぁん」
何言ってるのか、何を伝えたいのか
自分でも良く分かんなくなったけど…
それでも太輔はずっと、うんうんって聞いてくれて…
「ずっと俺の事、思ってくれてたんだね。」
そう言って、頭を撫でてくれた。
「こんなに真っ黒になって…」
埃まみれになった俺の体を指で優しく撫でてくれて…
涙もそっと拭いてくれた。
「ありがとな、宏光。」
暗闇の怖さも…もう誰も見つけてくれないんじゃないかって不安も…
太輔の優しい声と体温に溶けてなくなっていくんだ
「太輔…大好き…」
「俺もだよ…」
ホッとしたら、何だか気が抜けちゃって･･･
俺の意識はそこで途絶えた。
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作者名：MISA
| 作成日時：2014年8月31日 9時
