１０（Fside） ページ10
フードに入った北山は、よほど気に入ったのか鼻歌を歌って超ご機嫌。
さっきからずっと、耳の後ろから北山独特の鼻にかかった甘い歌声が聞こえてて…
うん、悪くはない。
「ふぅ。疲れた…」
鞄を置いて、疲れた体をいつもみたいに後部座席に預けようとして気が付いた。
このままシートに凭れかかったら、北山が潰れてしまう…
「どうしたの？ガヤ？」
「ん？」
「ハハハっ。すげぇ不自然。直立不動(笑)」
「だって…」
「上着、脱げばいいじゃん。」
玉はそう言うけど…
「うん。…けど…」
北山、喜んでるし…上着脱いでて北山が落ちると困るじゃん。
「北山が喜んでるならこのままでいいよ。」
俺がそう言うと、玉は何だか嬉しそうに優しい笑みを浮かべた。
「なんか…大変な事になっちゃったけどさ、ガヤがこの後オフで良かったよ。」
確かに…
「そうだな。こんな姿の北山をおちおち外に出してらんないしな。」
他の人に見られたら大騒ぎになる。
「…俺はそういう意味で言ったんじゃないんだけどな…」
「ん？」
「いや。とにかくミツの事よろしく頼むよ。このままミツが元通りになるまでガヤが面倒みるのが、俺は一番いいと思う。」
まあ…最初から俺はそのつもりだったけど…
そうだよな。
皆にはまだ話してないし…
「うん。…まあ、ちょっと不安はあるけど…俺が面倒みるよ。」
何も気付かない振りをして答えた。
「ミツ、良かったね！……あ…」
俺のフードを覗き込んだ玉がクスクス笑う。
「ん？」
「ガヤ、上着脱いでも大丈夫だよ。ミツ…寝てる(笑)」
玉に手伝って貰ってそーっと脱いだ上着のフードの中で、気持ち良さそうに丸まって眠ってる北山が、本当に可愛くて…
「ホント、小動物みたい。」
北山が起きてしまわない様に、大切に上着を抱えて俺は自分のマンションへと戻った。
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作者名：MISA
| 作成日時：2014年8月7日 0時
