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◇ 第3話*わたがし白昼夢 ◇ ページ38

まるで空想が現実に
なったような感覚に
陥ってくらりとした。

「あ、の…心配して、くれた…?」
「…してなかったらわざわざ来ねーだろ」

否定しなかった。否定されなかった。
純粋に嬉しかった。

「ごめんなさ…っむぐ」

何故か口が塞がれた。冷たい手に私は
はてなを浮かべるしかなかった。

「なぁーに謝ってんだ?こういう時何て
言うかおめーは習ってねーのか?」

影浦君の歯がまるで牙に見えて、いつにも
増して眼光が鋭くて、突き刺されたみたい。

「んぐ、ぅ」

何かしら言おうと思ったけど口が塞がれて
どうもこうもない。

「こういう時なんて言うんだ?言ってみろ
…間違えたら覚悟しろよ」

ぞわっと背筋が凍る。口から手が離され
私はごめんなさい以外を考える。
謝罪じゃない、心配された時…。

「ぁ…あり、ありがっ…とう…?」

何だか恥ずかしくて、徐々に声が小さく
なって、怒られないかと影浦君の顔色を
覗き見る様に窺う。

「…へたくそが」
と言って影浦君は私の頭をぐしゃっとして。
「どーいたしまして」

満足した様な顔で隣のベットに潜り込んで
行った。それから少し遅れて保険医の
先生が帰って来て、あぁ副作用で…と
感心した。

「あら、起きた?大丈夫?甘楽さん」
「は、はい…多分…」
「でもまだ顔色悪いわね、はい体温計」

私は体温計を脇に挟んだ。体温計を受け
取った時、先生の手が凄く冷たくて
熱出ちゃったなーと思った。

ぴぴぴって機械音が測り終ったのを知らせ
数字をみると37.8の文字。私は低体温で
ここまで熱が上がるのは希だ。

「あら、これはまだ熱上がりそうね…
早退ね。すぐ用意して帰りなさい」
「はい…ありがとうございました、
失礼します」

私はぱぱっと制服を整えて教室に向かう。
…やばい、歩くとぐらつく。
私は壁やら何やらを支えに少しずつ進んだ。
あんまり教室に入りたくないのも
あってのこれかもしれない。

階段の途中で、膝が笑うみたいにがくがくで
少し休憩。階段汚いけど立ってられない。

「…はぁ…」

ため息を吐いて、呼吸を安定させる。
早く帰らないと…。

もう一度立ち上がってよたよたと
階段を上る。生まれたての小鹿か!
気合いを入れて一気に上ろう!
いつもの速度で階段を上っていく。

ーズリッ。
「え…?」

不吉な音と共に私は宙に浮いていた。
…ああ、宇宙ってこんな感じか。
もう色々面倒になって、来るだろう衝撃が
怖くて目を閉じた。

◇ 第4話*できたての熱に浮かされる ◇→←◇ 第2話*回想バームクーヘン ◇



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設定タグ:ワールドトリガー , 影浦雅人 , ワートリ   
作品ジャンル:恋愛
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幽々華(プロフ) - これ普通に好き!← (2020年7月12日 1時) (レス) id: 1e7a7481f9 (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス(プロフ) - 鵺さん» お返事遅れてしまいすみません!ありがとうございます!まさか褒められるとは思いませんでした…! (2016年8月1日 11時) (レス) id: 82e1e84f5b (このIDを非表示/違反報告)
- イメ画すっごく上手いけど?! (2016年7月22日 23時) (レス) id: 864fc18fb6 (このIDを非表示/違反報告)
soyon(プロフ) - ルピナスさん» 返信遅くなりました。はい、これからも頑張りましょう! (2016年3月29日 0時) (レス) id: 07f2e5561f (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス(プロフ) - soyonさん» soyonさんもですか!?お互い負けずに頑張りましょう! (2016年3月28日 18時) (レス) id: 82e1e84f5b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルピナス | 作成日時:2016年3月24日 15時

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