愛の在り方 【苺】

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川に美しい満月が揺らめいている。


あまりの冷たさに耳が痛みを持ってくる。







俺にとっての女遊びは欲 求 不 満 、
だからとかではない




承認欲求だ






昔、自分を否定され続けた経験が今になって変な方向で反動を起こしていることを痛々しいほど自覚していた





でもこうさせたのは誰？


そこら辺にいる人間でしょ。






莉犬くん 好きだよ



甘い毒で俺を満たして沼にハマらせた頃に散々に突き放す



こんなに楽しいこと、他にあると思いますか






『満月なんですね。なんだかロマンティック』





そうだな。
この女が喜びそうな言葉は何だろう。

昔似たような状況に落ち合った時、俺はなんて言って
射止めたんだっけ





泥でまみれた脳をフル回転させて、甘い毒を抽出していく。



貴方だけの、甘い毒。





あぁ、そうだ。
文豪の君には、この言葉が丁度いいね。






｢月が綺麗ですね｣




俺はたっぷり含み笑いで彼女の頬を撫でた。
きめ細やかなそれは、丁寧にスキンケアされた賜物だと今更ながら思う。





さぁ、なんて返す。Aちゃん。

これから俺と、甘いことして遊ぼうよ。





"死んでもいいわ"



これがごく一般的且つ世間的に知られている返事の仕方だろう。





君の口から、そんな言葉が象られるのを待った。








『…貴方と見る月だから、でしょうね』




青白い光を持った麗しい唇から漏れたのは、
俺の期待する言葉ではなかった







死んでもいい



そう一言言うだけでことは済むじゃんか。
早く言えよ


なんて一瞬イライラしつつも頭は至って冷静で
彼女の言葉の意味を探る。





"これからもずっと一緒に月を見たいですね"




そういう意味だと悟った瞬間 勝ちを確信する。




さぁ、言え。

俺が好きだと。
貴方じゃなきゃもうダメなんだと。




遊び回して使い古して朽ちてから捨ててやるからさ。





でも




彼女がニコッと笑った。
それは、今日初めて見せた別の意味の笑顔だった。




何となく、凍ばった。



街の明かりが消え落ち、暗闇が生み出される。



あぁ、もうこんな時間





『私はまだ死にたくない』




俺の心臓を的確に指さして突いた彼女は
髪をなびかせて1人立去る。




その瞬間、腹が立って身体中に熱を帯びる。





俺が今日やってきたのは女遊びの一環




いいえ。





俺は遊ばれていた





女遊、



まさに君は女優のように────────



恋は、 おもちゃだ。

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