雨の日、ネコ日和。【さとみ】

土曜。 ページ9

・


────6月18日 土曜日、全国のニュースです。


あぁ、今日も雨だ。

そして普通に寝坊した。

やっば、今何時よ？


もうそれすら分からないので部活は今日もサボる。


────何せ雨だしね。



理由にならない理由を頭に思い浮かべて自分を無理に納得させる。



カーテンを開けても陽の光が一切ないこの世界を目に映し込めば俺の心は酷く安堵した。





両親ともに出張で今日から1週間いない
そんな1人の寂しい朝、



戸棚を漁って見つけた食パンにバターを適当に塗ってトースターに投げ込んだ。


その間に珈琲でも作ってみる。
しかし残念なことに慣れないことするから火傷した。



こんがりと焼けたパンと珈琲をテーブルに置き、片手に例の文庫本を手に取りちょっと洒落た男になり切ってみる。




まぁ当然その姿は決まらず不格好なんだけどね。




────────さとみさん。


ふと彼女の声が聞こえたかのような錯覚に陥る。


昨日会えなかっただけなのに、昔からの知り合いでもないAさんの姿が唐突に思い浮かんだ。



｢何で昨日いなかったんだろう｣


口から思わず漏れたのは寂しさから来る声音。



彼女の連絡先が入っていないスマホなんかに用はなくてぼんやりとただ雨の垂れる窓に思いを馳せた。




結局手に取った本は1ページも読み進めなかった。



｢あぁもう無理だ！こうなったら意地でも俺が会いに行く｣




悶々と考えていたって行動に移さなければ
会えるものにも会えないんだから。




俺は適当にそこら辺に干してあった服を羽織り、
無造作に扉を開けて家を出た。




" じゃあ雨が降ったらこの場所で会いましょう "




そう言った君の言葉が嘘でないなら




昨日はたまたま忙しくて来れなかっただけで
今日はその場に現れるかもしれない。




思い立ったが吉日、傘だけ手に取り雨が暴れる
無防備な空間へと俺は飛び出した。

雨女。→←固執。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す