固執。 ページ8
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───関東地方では10日連続の雨が観測され…
───今日も雨、気分まで落ち込みますね。
───梅雨明けは一体いつ頃になるのでしょうか?
テレビをつけた瞬間流れたニュースを見て俺は雨の知らせを喜んだ。
"晴れの日が待ち遠しいですね"
ちょっと前の俺が思っていたことをニュースアナウンサーが簡単に吐いた。
今現在の俺は雨が止まないで欲しいと切実に願っている。
雨が降らなきゃあの子には会えないから。
「じゃあまたな!なーくんは生徒会頑張ってや!」
「ありがとう〜」
「俺も帰るわ」
今日は部活がオフだから心置き無く罪悪感も抱くことなくAさんに会いに行ける。
更にいつも以上に軽い足取りで公園へ向かえば
「あれ、いない?」
いつものベンチに麗しい少女の姿が無かった。
今日来るの早すぎたかな?
傘をゆっくりと閉じ、Aさんが座る余裕を残してベンチに腰かけ、今日はスマホじゃなくて彼女を真似て購入した薄っぺらい文庫本を手に取り読んだ。
本を買うだなんて自分でも気持ち悪いと思った。
そんな不可思議な矛盾したこの行為は
Aさんとの共通点が欲しいが為のものだった。
意外と本って面白いな。
────────にゃあ!
…?
割と本を読み始めたらその世界観に吸い込まれた俺は
とある1匹の猫の鳴き声で現実世界へと引き戻される。
────────黒猫。
「…おぉ?クロ!?クロなのか!?久しぶり!」
カサカサっと木陰からなんやら物音がして
振り向いた先には可愛らしい猫ちゃんが俺を見つめる。
14年前くらい────
俺がピカピカのランドセルを背負う歳より前にこの公園で出逢った当時まだ子猫で俺が勝手にクロと名付けた黒猫がいた。
その猫は可愛く鳴いて俺にすり寄ってくる。
「しばらく見ねぇうちにでかくなったなお前ー!」
俺にもちゃんと毎日遊べるような友達が出来てから猫なんてそっちのけでひたすらバッドを振り回してたからなんか久しぶり。
でも親に怒られたりとか辛いことがあったら1人でこっそり抜け出してこいつに話しよく聞いて貰ってたっけな。
まだあの時は掌に乗るくらい小さな小さな子猫だったのに。
時の流れってびっくりするほど早いのな。
一声鳴いて一瞬俺にすり寄ったあと
その猫は姿を消した。
「懐かしい」
その日、Aさんは結局この場に現れなかった。
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時