悪夢。 ページ22
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この世の中では、どうも不思議なことが身の回りで割と頻繁に起こっているらしい。
例えば本来見えるはずのない幽霊なるものが見える時もある。
例えば本来未来なんて予測出来るわけないのに予知夢で未来が分かってしまう時もある。
そう簡単に身の回りで不思議なことが起こって溜まるものか。
そんなやけくそな気持ちで考えてみる。
──────────もし、今自分が生きている
この世界そのものが不思議な存在だったら?
…くだんねぇ。
夢の何処か微睡みの世界でも哲学的なことを考えている俺は馬鹿なのだろうか。
俺はとあるひとつの伝説を聞いたことがあった。
"雨降りの日は世界が狂う"
それが本当なのか嘘なのか、俺には勿論分からない。
確かめようもないが恐らく嘘だろう。
夢の中では俺の愛する猫、クロが現れた。
クロがAさんと仲良く戯れていた。
その世界に、彼女らの世界に俺は────
い な か っ た 。
待ってよ!
そう大声で叫び駆け出しても夢の世界の俺はどうも足が遅い。
どうして俺だけが仲間外れにされなければならないのか。
夜に交わしあった愛のキスは嘘だったの?
Aさんにとってはくだらない夜の戯れだった?
夢の中なのに相変わらず馬鹿げた思考だけが占拠する。
" 待って!"
ずっと貴方を見ていた。
ずっと、貴方のことが好きだった。
だから17年の時を経てやっと、ここに来れた。
貴方から初めて与えられた愛は暖かくて素敵だった。
"ありがとう"
そう誰かが呟いた気がした。
夢の中の俺が最後の力を振り絞った時、
彼女と猫は強く放たれた光の
世界へと消えていく…。
ど う し て 俺 を 1 人 に す る の 。
─────はっ!
ザ─ッっと無機質な暗くて重い
雨の音で目が覚める。
明るいからもう朝方なのだろうか。
時計の針を見れば時刻は9時過ぎ。
ぜんっぜん朝方じゃねぇ。
「やっべ、また部活サボっちゃったわ」
行く気なんてサラサラなかったくせにそれらしく呟いてみる。
「Aさん起きてる?」
ふと彼女の名を呼んだ時、やっと俺は違和感に気付く。
────隣に彼女の姿が無いのだ。
「Aさん?何処にいるの?」
冷たいフローリングに足を這わせ狭い家の中を探した。
だが何処にも彼女の姿は無かった。
故に彼女の温もりはもう存在しなかった。
雨音だけが室内に虚しく残る。
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時