雨月。 ページ21
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細長い箱。
彼女にそれを見せれば案の定何か分からない様子で首を傾げる。
その箱の蓋をそっと開ければ。
『…これは?』
キラキラ光るネックレス。
「俺、いつか人生の中でこの人は手離したくないっていう女性を見つけたらネックレスあげるって決めてたんだよ」
慣れない手つきで丁寧に箱から取り出す。
彼女の瞳のような透明な麗しき宝石がとても輝かしい。
『でもまだ私達17だよ?相手決めるの早いですよ』
たじろぐのも仕方ないか。
目をまんまるにしている彼女は心做しか俺からの
愛を拒んでいるように見えた。
「何でって…お前のこと一生手離したくないからに決まってんだろ」
自分で言ってプロポーズとも捉えられる発言をしたことに今さらながら恥を覚え顔を真っ赤に染める。
どこまでも俺はかっこつかないんだな。
『…そっか』
優しくでもどこか悲哀的に微笑んだ彼女は
やはりこの世のものでは無いのかと思うほどの
透明さを放っていた。
「まぁいいから後ろ向けって。俺がつけてやる」
彼女に髪を持ってもらい、白くて細い綺麗な首にそれを巻きつける。
独占欲の塊?
知らないよそんなもん。
俺が手離したくないって思ったモノにはちゃんと印、つけておきたいじゃん。
どんな所有物にでも自分の名前を書いていたあの小学校時代のような感覚。
白い首に噛み付いて1つ淡いピンクの印をつける。
『ちょっ、…』
抵抗なんてさせないよ。
「俺にもつける?」
『つけるっ』
シャツを鎖骨が見えるくらいまで引っ張り控えめに吸い付くように噛まれた場所を見れば赤い華が俺にも美しく咲く。
満足。
「ありがとう」
微笑んでAさんの頭を撫でる。
首には俺があげたネックレスと華が君を飾る。
『私初めてネックレスとかつける…!嬉しいよ』
はらりと落ちた髪を耳にかければ真っ赤な肌が
チラついて見える。
"さとみさんは私の初めてをどんどん奪っていくね"
月が怖いほど美し過ぎた夜、俺は彼女が放ったそんな一言に全てを奪われてしまっていた。
互いにそれぞれがつけたお揃いの華を並べ、狭苦しいベッドに潜り込む。
甘い香りと優しさに包まれたこの世界に俺が望むものはこれ以上何も無かった。
甘い空気がどこかへ漏れないようにピシャリと窓を閉めた時、外は相変わらず寂しく雨が降っていた。
─────俺の、
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時