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空気の入れ替えをして、深呼吸する。
生徒がグラウンドで部活する様を僕は何処か映画の観客のように遠い気持ちで眺めていた。
いよいよ3者面談から次の生徒で僕は開放される。
その生徒の成績表を見て僕は満足気に頷く。
彼女くらいの評定平均があれば受かるだろう
従って僕がこの生徒の母親に向かって厳しい言葉を向けることもないだろう
そう考えると一気に脱力した。
その前に一コマ休憩時間があるので久々に教室の整理をやってみることにした。
気分がいい今やらないと多分今後二度とやらない
とりあえず乱れた机の列をピシッと真っ直ぐに整えてみる。
おーん。
それだけでもかなり見栄えは変わるもんだな
そう思っていたところ、足音が近づいてくるのを感じた。
コツ、コツ、コツ、
夏の蒸し暑さに響く音は異様なほど冷静だ
その音と同時に僕の胸が妙な高揚感に包まれるのを感じた。
おじいちゃん先生かと思い少し考えたのだが普段から緩いスリッパを愛用する彼に至ってこんな音するわけない。
隣のクラスの女教師か。
そう心に落ちた瞬間そんな音どうでも良くなって様々な大学の赤本が並ぶ本棚を片付けようと手に取った時
じめじめとした苦しい夏風が、止まった
正確に言えば、風を気にしないほど別なものに心を奪われた
『うわぁ、自分の部屋の掃除も出来ない人が教室掃除まともにやってる〜!』
……あ
再び、胸が高鳴った
その声の主を知るのが怖くて咄嗟に耳を塞ぎたくなった。
でもその声はどんどん僕に近づいてくる
やめて、 お願いだから やめてください
ずっとずっと 封印してきた感情が溢れて止まらなくなるから
"小学校の時からずっと掃除サボり魔だったくせに"
決定打を食らう。
神様、ごめんなさい
僕が何をしたって言うんだ
人の女とキスを交わした罰なのか
もう、僕は────────
『お久しぶりですね』
" こ ろ ん
ぞわり、と身震いした
僕は何も答えない
否答えないんじゃない
答えられなかった
『えぇ何、保護者のこと無視するんですかぁ』
違う違う違う
僕はあの日のころんじゃない
ころん先生なんだ
やめろやめろ、
………泣くな、馬鹿が。
そう言い聞かせてもセーブが効かないのは目の前に現れたのが
"あなただから"
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです!私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです!\(^-^)/ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです! (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました! (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですw人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年10月3日 20時