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「…妻を引っ掛け回すのやめてもらってもいいですか」
余韻に浸りながら別れを告げた僕は扉を優しく閉めて振り返った時に忍び寄った影に驚きを隠せなかった。
早足で駆けてその場を去ろうとした時自分より数センチ大きな背が行く手を阻んだ。
「はは、なんのことでしょう」
乾いた笑い声。
良かったな、A。
お前には今夜きっとお仕置きという名の甘い夜が待ち構えてるはず。
…こんなことにしちゃって、ごめん。
「…リップ。まさかこんな濃い色、貴方のでは無いですよね」
言われてみてそっと自分の唇に触れればラメの入った艶やかな美しいピンク色が手についた。
「彼女の同意の元なんですか、それとも貴方が一方的に」
「自分で彼女に本当のこと聞いてみたらどうでしょうか」
──────それとも聞くのが怖いんですか？
男が全てを言い終わる前に食い気味になって答える。
なぜ負け犬の分際で煽れるのか。
僕は優しく微笑み、対照的に怒りに震えるタキシードの男の返事を待った。
「…っ、幼馴染だか元彼だか知らないけど良くないと思います。言いたくはないですが今回が初めてじゃないですよね」
「…僕を殴りますか？」
手のひらについた彼女のリップにわざとらしく
口付けなんてしてみる。
自分らしくない。気持ち悪ささえ覚える。
黒歴史確定。
「…まさか。殴りませんよ。俺の負け惜しみみたいだし」
この方は僕より3歳くらい年上だっただろうか。
怒りの回避の仕方が上手かった。
花嫁専属のスタッフが僕を横目に見て微笑んだ気がした。
僕は何となく知ったような顔で笑顔で頭を下げる。
そんな様子を花婿は疎ましそうに眺めていた。
｢A様の準備が終わりました｣
…そろそろか。
僕はこの男よりも先に可愛いAの姿を拝めたことに満足した。
「分かってると思いますが今後一切Aには会わせませんので」
─────最後に釘を打たれた。
「百の承知です｣
"でも大切にしてやらないと僕が奪っちゃうよ"
僕は自分の唇を舌で舐めて微笑んだ。
そして最後に毒のように彼に告ぐ。
"ちなみに僕は彼女のこと好きじゃないです"
頭に ？ を浮かべた間抜けな男の横を通り抜けて無駄に大人ぶった。
美しい結婚式場特有の白いキャッスルが僕には不釣り合いだ。
最後まで素直になれなかったのは
"あなたのせいなんだよ"
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眠民。 - ころんさんの小説久々にみたのですが‥雰囲気大好きです🤞🏻🤞🏻私的にはハピエンだと思いました。 (2月8日 18時) (
レス) @page39 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すんごく良かったです！私は最後少しモヤモヤしちゃったんですけど、おもしろかったです！＼(^-^)／ (2023年4月14日 17時) (レス) @page39 id: da249a0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ふわち - 読んでるとき、思わずないちゃいました…。すごくおもしろかったです！ (2022年8月19日 11時) (レス) @page39 id: ed311d2c92 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - かけちゃってるんですから。恋って、すごく苦しいものだけど、このお話の恋はその中でも苦しかったです..。報われないなって。長くなっちゃいましたが、考えられるお話をありがとうございました！ (2022年8月17日 9時) (レス) id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
かな?(プロフ) - 颯桜さん» このお話、読んでて本気で泣きそうになりました。すごく切なかった...。映画化してほしいくらいですｗ人間の汚いところとか、逆に苦しいくらいに綺麗なところとか、本当にぐわってきました。ハッピーエンドかもしれないけれど、残酷ですよね。人生の半分を幼馴染に (2022年8月17日 9時) (レス) @page38 id: 1a1d4d0288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯桜 | 作成日時：2020年10月3日 20時
