空に溺れる

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「なぁ優太。なんで人って飛べないの？」

「んぁ？」


テスト最終、部活再開の日

部室前で並んでスパイクを履いている間に
俺は優太に質問を投げかけた
彼ならどんな答えをくれるだろう。

俺が彼女に渡せなかった答えを
優太は思いつくのだろうか



「ほら、あの古典の授業中で出て来ただろ？あの詩。」


「あー、あれは、あれだよ。」


見えない何かを指さしながら
優太は目を瞑りうんうん、と唸る


「…わかんないならいいよ」

「いや待てあれはな、人間の仕事じゃないからだ、うん。そう！」

「仕事じゃない？」



そう、と言って優太は立ち上がり
スパイクのつま先をトントン、と床に立てた



「鳥は飛ぶのが仕事で、、人間はなんだったっけ？」

「地面を早く走れる。それに歌を知ってる。鈴が知らないたくさんの歌。」

「お、紫耀」


後ろから紫耀がやって来て
それだけ言い残し部室に入っていった。


「だからな、結局人間が1番すごいって歌だろ？」

「いやそうは言ってないでしょ、みんな違ってみんないいって、歌……」




あ、そうか。
そういうことか。

だから
飛べるんじゃない？と容易に言ってしまったことが
彼女にとって腑に落ちなかったんだ。

人間がもし空を飛べてしまったら
鳥特有の取り柄を人間が奪ってしまうことになる。

だから彼女はつまらないって言ったんだ。

俺がどうこう、というよりも
そんな人間はつまらない、という彼女のメッセージだったのかも。



彼女は初めから
「人間が飛べるかどうか」ということを真の問題としてた訳ではなく

俺が
「みんな違ってみんないい」ってことをちゃんと理解してるのかを聞きたかった、のかもしれない。



まぁ、俺の推測でしかないけど

少し踏み入れたところを漁りたがる彼女なら
やりかねない質問だとは思う。



「でも俺思うんだけど、
みんな違ってみんないいってさ
結局 不平等なことを認めてるんだよな」


「え？」


「だって思わない？
もし俺が鳥だったら空を飛べるんだぜ？
たとえば廉が鳥でもそうだよ。」


ここにも変なやつがいた。



「人間でも空が飛びたいって思うやついるかもしれないし
そういう人からすれば鳥の方が羨ましいよな
じゃあみんな違ってみんないい、ってことに納得はできないよな。」

「どうした？岸くん」


着替え終わった紫耀が怪訝な顔をして優太を見た。

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