Storage*29 ページ30
「――……じゃあ、今日はそろそろ帰ろうかな。」
その言葉にハッとして時計に目をやると、その針はそれぞれ7と6を指していた――もうこんな時間か。
一人ではひたすらに長ったらしく感じられた時間も、彼といるとひどく短い時間のように感じられてしまうから不思議だ。
色々な感情がミックスさせられたみたいに、ぐるぐると絡み合って離れない感覚。
……慣れないそれの対処法は、無論分からないまま。
『くしゃ』
気が付けば、彼のシャツの裾を握っていた。
それに気が付いて我に帰ったコンマ数秒後。
慌てて手を離した今は、既に遅かったのかもしれない。
不思議そうにこちらを見る彼。
……恥ずかしくて、消えてしまいたい。
「……どうしたの?」
言えない。
――まだ一緒にいてほしい、なんて。
違う。
寂しくなんかない。
これまでずっと一人でいたじゃない、月に数回会いに来てくれてただけじゃない。
あぁ、もう。
――顔が、熱い。
「……気に、しないで。なんでもな」
「嘘。なんでもなくないでしょ。」
いいの、大丈夫だから。
ねぇお願い、これ以上優しくされたら私
もっと、おかしくなっちゃう。
ドアの方へ向いていた彼は踵を返して、立ち上がっていた私の方に歩み寄ってきた。
これ以上ないくらい優しく、まるでとても大切なものに触れるような手付きで、私の頭に手を置く。
「……どうしたの?」
自分でも、どうすればいいか分からなかった。
温かい雫が頬を伝っている理由も、こんなに胸が苦しい理由も、彼といられるだけで嬉しくなる理由も、全部。
分からないの。
人差し指でそっと涙をすくいあげられる。
「……明日休みだし、泊まっていこうかな。」
「っ、え」
「一人部屋だもんね、聞いてみる。」
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宇宙音(プロフ) - 裏音さん» わわわありがとうございます!!楽しんでいただけるようなものを目指して準備してますです!(?) (2015年3月14日 23時) (レス) id: c19bdcd8dd (このIDを非表示/違反報告)
裏音 - 完結おめでとうございます!前作から全て読みました!すごく面白いと思います!続編、楽しみにしていますね( ´∀`*)ゞ (2015年3月14日 17時) (レス) id: b03c2882f6 (このIDを非表示/違反報告)
宇宙音(プロフ) - まひめさん» 感動するだなんてお言葉、恐縮です……!!応援ありがとうございます!! (2015年1月24日 0時) (レス) id: c19bdcd8dd (このIDを非表示/違反報告)
まひめ - すごくいい小説ですね…!!感動します。更新頑張ってください! (2015年1月20日 20時) (レス) id: 20c20fcea2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇宙音@千歳 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sorane9132/
作成日時:2014年7月25日 16時