【そ.ら.る】Heart to each other echoed - Sound overlapping -

Storage＊26 ページ27

『♪♪♪♪♪』


ノートPCから流れるピアノの音。
高速で打ち込まれたその音は全て私が作り出したものだ。

初投稿となる、ピアノ１台の一発弾き即興譜面によるアレンジ動画を自分で再生していたところ。

"自分で再生"といっても再生回数を伸ばすためだとか、そういった理由ではない。
むしろ再生回数は自分の予想を優に越えるほどの数値をカウントしていた。

じゃあ何故かというと

＜この人誰!?
＜神北
＜初投稿でこれか
＜譜面ほしい
＜譜面あっても引けない
＜一発弾きって嘘だろ

私のピアノに対する、明瞭な批評を見るためだ。

いくら世界の舞台に立ったことがあるからといったって、その時のことはまったくもって覚えていないわけなのだ。
"ボロクソ言われたらどうしよう"なんて不安も勿論あった。否、今なお残っている。


誰だって叩かれるのは怖い。
ネットで活動する以上、それと戦いながらになることも分かっている。


そしてそんな不安を抱えて、おそるおそる開いたページは

――――思わず声をあげてしまうほど、ありえないような状態だった。


再生回数は投稿１週間で余裕綽々に殿堂いり、更にマイリストは再生回数の半分ほどの数登録され、更に動画の最後は"８"の弾幕が幾重にも重なっていた。
通知が来ないようにしていたため知らなかったが、デイリーランキングで上位に食い込んだこともあったらしい。


「…………夢みたい、かも。」
「――なにが？」
「うわあああっ」


一人言に返事が返ってきたら、びっくりもする。至って普通のことだろう。

ただ思わずあげてしまった声に関しては反省したい。
なんだあの女らしさの欠片もない悲鳴は。

でもまあ、声の主は分かっているのだ。
少し憎々しげな声色で、その声の主である彼の名を呼ぶ。


「――亮さん……！」
「どうも」
「どうもじゃないですよ心臓に悪い……」
「ごめんごめん」


＊

【歌い手】♭Fabella de Tempore♯
はつね様とコラボさせていただきました……!!

ちょっと覗いていって下さると嬉しいです。

Storage＊27→←Storage＊25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す