【そ.ら.る】Heart to each other echoed - Sound overlapping -

Storage＊２ ページ3

走る

前へ、前へ

後ろから涼の声が聞こえるけど、それすらも無視して

走る

Ｓ県の某病院、東病棟３０５号室
心の病を持つ人、リハビリを待つ人が入院している病棟だという。
この部屋に、俺の捜しモノがある、と。

今朝５時。
実家から掛かってきた電話

「○○病院に、Aちゃんがいる。」

と。

どうやら、こっちの病院に入院するタイミングを見計らって電話したらしいのだ。

一昨日まではまだ、向こうにいたようで移動先であるこの病院に来たのも、昨日の深夜。

しかも我が両親は

俺という"幼馴染み"が行く事を病院側にあらかじめ伝えておく

というお節介までやいてくれた。


「またね」なんて、涙を堪えて笑顔を作って、さ。

別れたんだ、宮城と東京は遠すぎるから。


「………いい加減…っ

………止まれよ亮さんっ！」


ぐいっ

後ろに引っ張られる。


「いった…………何すんの…」

「"何すんの"じゃない！何回無視するの!?」


五月蝿いな…

早く、Aに会わせて。

５年ぶりなんだよ？
どれだけ、我慢したと思ってるの。

早く、早くさ
あの、柔らかい猫毛の黒髪を撫でたいんだ。
あの、小さな背中を抱き締めたいんだ。

昔みたいに。


「………ベタ惚れリア充かよ。」←

「五月蝿い黙れ。あと心読むな。」

「特技ですからぁ♡」


無駄にキャピキャピした声でピースサイン。
そういうのがやりたいならどこかの事務所ででもアイドルデビューしてろ、なんて。
………コイツの相手すんのは疲れる。


「………じゃ、３０５行こっか。亮さんの大好きな大好きなAさんがいるんだもんね？」

「ニヤニヤすんな。」

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