《 4 》 ページ47
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「…A?」
「...…」
「同窓会はどうしたんだ?」
「…っ」
あの後…どうしたんだっけ。
いつの間にか踵を返して、我に返った時には征十郎の家へ逆戻りしていた。
そして征十郎を目に入れた時、自分が泣いている事に気づいた。
「…とりあえず、ほら。中入りな。」
「…」
大きな掌が優しく私の頭を撫でた後、滑るように背中にまわり中へと導く。
出る前も座っていたローテーブルの前に腰を下ろし、軽く後ろのベッドに凭れ掛かる。
なんでか分からないけど、拭えど拭えど涙が止まることはなかった。
私が座ったのを確認してからキッチンへと消えて行った征十郎がまた現れたのはそれから数分後。
カップを2つ机に置いて私の隣へ座った。
「まずは落ち着こうか。」
机から香る、香ばしい大人な香り。
既に充満しきったそれに、私はすぐコーヒーだと気づく。
カップを両手で包み込みながら、その茶色い海を眺める。
…やっぱり、お互い何にも知らない。
頭に浮かぶのは、千尋が入れてくれたミルクティ。
ミルクたっぷりの甘いやつ。
…本当に、美味しかった。
「…飲まないのか?」
「…」
「A?」
「…ねえ、征十郎。」
「ん?」
千尋に会っただけで、こんなにも苦しいの。
触れられただけで、どうしようもなく泣きたくなるの。
私、やっぱり…
「…好き、なの」
この思いに、蓋なんて出来ない。
「千尋が、…好き。」
緩まった蓋を開けてみれば、これでもかというほど中から溢れてきて止まらなかった。
好き。
好き。
大好き。
今度は真っ直ぐ、濁らせる事もなく征十郎に伝えた。
ただ一つそう言えば、眉を顰めて僅かに口元を噛み締めている征十郎がいて。
ああ、本当に征十郎は私の事を好きになっていてくれたんだと、改めて実感した。
それでも、こんなの駄目だ。
征十郎といてはいけない。
あの時は曖昧にしてしまったけれど、今はこんなにもはっきりと気持ちを確かめられているから、私はそれをきちんと言わなくてはいけないと思った。
いい加減な気持ちでは、とてもじゃないけどこの関係を続けてはいけないと思った。
それは征十郎に失礼だから。
「…ねえ、A。」
「……」
「……お前は、一度も俺に " 好き " って言わなかったよね。気づいてた?」
「…っ!」
ああ…そっか。
何にも与えてこなかったのは、私の方だったんだ。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時