【銀魂】空から女の子が降ってきました。18

第七百十訓 ページ20

不意に、螢ちゃんが神輿の後川に乗る沢山の愛染香にそのしなやかな指を伸ばした。



好いた男への思いが分からなくなって怖いのであろう不安の分だけ、彼女はその香を愛しげに見つめる。






螢「この惚れ薬の何がいけないの？時と共に簡単に移ろう人の心より余っ程美しい愛の形と思わない？」



『………けど、それはどす黒い"愛"だろう？愛染香で無理矢理染めて引き出した感情(愛)』



螢「確かにそうね…けれど結局、愛は幻想じゃない。同じ幻なら美しい幻が見たいと思わない？」






はは、そうかな。






『ねぇ、屁理屈の様で悪いけど…君がいつの日か好いていたらしい男に抱いた感情は愛でないと思うよ？』






教えてあげようか。






『＿＿＿＿それは"恋"だ。愛とは違って自分本位で、少し身勝手。だけれど愛では塗り潰せない感情』






愛は真心、恋は下心とかいう言葉を聞いた事がある。愛は相手さえよければ良いと自分を慈しまない。


けれど、恋は違う。貴方と結ばれたいだとか…自分が好いた人と幸せになりたいだとか自分を含ませた感情を抱く。






『ふふ、恋は盲目とか言うけど本当だね。だって君がその男に向けていた感情が＿＿＿恋なんだもの。

だからこんなに引きずって引きずって拗れて、周りを巻き込んでる』




螢「恋、とて……恋とて幻想に決まってるわ」




『＿＿＿＿＿＿ねェ、螢ちゃん』









.











『愛では恋を、塗り潰せないよ』









.










…ま、それが愛だったとしても私は忘れてしまう程の男を愛したりなんてしないけどね。


もっと良い男を見つけて、その男が私を忘れない様に自分も良い女になってやる。それが丁度いいでしょ？







螢「…っ、なんと言おうと残ったのは貴方達だけよ。皆で真実の愛の中へ行きましょう？」



『おや、振られちゃった。残念』







ふわり、と桃色の煙が舞う。





＿＿＿＿＿色魔達が、焚かれた大量の愛染香を持ってこちらに近付いてきているのだ。





自然と煙は此方を包むように近付いてくる訳で。






(……あー、ここで潮時か？)












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