最低な私 ページ5
また憂鬱な1日が始まる。
今日も世界は普通に回る。
貴「...」
いつの間にか寝てたみたい。
起きたときには光くんはいなかった。
今日は卒業式。
本当なら私も出るはずだった。
高校には5、6回くらいしか行ったことがない。
友達はもちろんできなかった。
でも、私には一人だけ友達がいる。
こっちに引っ越してきたとき、仲良くなった子。
可愛くて、優しくて、本当にいい子。
病気の私にも優しく接してくれた。
ふと、窓の外に目をやる。
貴「...桜」
今年もこの時期がやってきた。
もうすぐ咲き乱れようとしている。
貴「......」
咲いてもすぐ散ってしまう桜。
まるで私みたい。
いや、私には似てないか。
私には、満開になる時期なんてない。
生まれたら、死ぬ。
幸せなんてこない。
誰かに愛されるなんてないんだ。
たとえ光くんでも...。
「......A」
貴「...っ！」
振り返ってわかった。
美香....。
一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、光くんの声に聞こえたんだ。
美「....具合、どう？」
美香。私のたった一人の友達。大切な友達。
貴「うん...なんとかね」
美「そっか、よかった」
貴「...卒業式は？」
美「とっくに終わったよ。はいこれ」
そう言って渡されたのは
貴「....つぼみ？」
美「うん。桜のつぼみ」
貴「....ありがと...部屋に飾るね」
花瓶に移そうと立ち上がる。
貴「...ぅえ」
美「....わっ！大丈夫？...私がやるよ」
最近、よくめまいがする。
貴「ごめんね...」
美「....気にしないの。...ねぇ、今日あの人は？」
あの人。
そう言われて思い浮かぶ人物は1人。
貴「..光くんは、今日....来ないと思うよ」
美「....そっか」
美香は、光くんが好きだ。
言われなくてもわかる。
光くんの話をするときの美香は、恋する子の顔だ。
貴「....」
美香にはうまくいってほしい。
私には未来はないけど、美香にはある。
美香なら、光くんを幸せにできる。
...そう思ってるのに。
なのになんで...。
苦しいよ...。
美香のこと大好きなのに、なんで憎んじゃうんだろう...。
美「ねぇ、A。よくなったら、二人でお花見行こうね」
私は最低だ。
こんなに優しい美香を恨むなんて。
貴「うん。絶対良くなるからね」
誰か...。
助けて...。
続く
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作者名：ルルネ | 作成日時：2018年4月1日 21時
