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23時30分を過ぎた。あと30分で今日が終わる。
携帯を手にとって見ても、新着メッセージはなし。パソコンを覗いてみても、DMもDiscordにも新着のメッセージは無いか見てみても、何も来ていない。
今日何度目かの溜め息が漏れた。溜め息をついて、見たばかりの携帯を見ても、やっぱり0件のメッセージに、また溜め息。
別に、僕ももう小さな子どもじゃない。プレゼントが無くったって、ケーキが無くったって、言葉が無くたって、泣いたりなんかしない。そりゃあ、悲しくないと言えば嘘だけど、祝われるのが当たり前だなんて思ってない。だから、どんな事だって僕を想って言ってくれたり、してくれた事なら、とっても嬉しい。誰だって、嬉しい。
でも、それでも。
「"……A…"」
思わず呟いた彼女の名前が書かれた画面をタップする。彼女と話したのはもう三日前の出来事だ。
タップしようとした指先がピタリと止まって、宙を彷徨う。くるくると指先を彷徨わせて、ちらりと時計を見れば後10分。
規則正しい生活をしている彼女の事だから、もう寝てしまっているかもしれない。けれど、後10分だけ、今日だけは、どうかわがままな僕を許して欲しい。
無機質なコール音が1回、2回、3回。5回目が鳴る途中で、ぷちり、と音が止んだ。
「……A?」
「…ん。なあに、CPT」
「A…A……」
「どうしたの、CPT」
「…うん。僕、満足したよ。Aの声、聞きたかっただけ」
ごめんね、とそう言って笑えば、電話の向こうでAが、小さく息を呑む音がした。
どうしたの?と首を傾げれば、酷く消え入りそうな声で、Aが、ごめんなさい、と呟く。
「ごめん、ごめんなさい…CPT……っ、私、わたし…」
「なになに?どうしてAがごめんなさいするの?」
「…わたし、最低だった……本当は、っ、CPTに、おめでとう、って言いたかった、の、に」
「うん、うん。だいじょぶ。ゆっくり?ゆっくりよ」
泣かないで?と言えば、Aは何度も吸って吐いてを繰り返して、最後に、すん、と鼻を鳴らしてから、静かに話し始めた。
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作者名:空色 | 作成日時:2022年1月6日 13時