第六話 ページ8
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烏野高校、良いチームだったな…
決して選手層が厚い訳でもない
周囲が言うには昔、強豪だったみたいだけど
安泰した基盤があった訳でもない
選手の一人一人が、
磨いた自分の武器を発揮して
短所をカバーする人がいて
みんなで一丸となって戦うスタイル
チームの歯車を合わせるなんて、そうそうできることじゃない
それぞれ人間なんだから、軋むときだってある
きっと、色んな壁があって
それを彼らは乗り越えてきたんだろうな
恵まれたセンス
それに加えて、めげないストイックな努力
勝利への執念
チームみんなの見つめる先が一緒なら
どんな相手にも果敢に挑むことができる
そしてその全てが実ったとき、
そこに勝利があって、
1番見たかった『景色』があるんだろうな
『…まだ!まだ、負けてない!』
『もう一本!!』
『ナイッサー!!』
烏野のチームを見て、懐かしさを感じた。
『ナイスキー!みう!』
『ナイストス!!A!!』
『あと1点でデュースだよ!!』
中学、最後の試合
私たちのチームだって、弱くなかった。
みんなで同じ方向を見つめていて
一丸となって戦っていた。
『ナイスレシーブっ!!ゆう!』
『レフト!!
……っ!A??!!』
3セット目
準決勝で宿敵の相手とぶつかった。
あと1点でデュースに持ち込めた。
相手はマッチポイント
強烈なスパイクをレシーブしたボールはキレイに私の頭上に帰ってきていた。
なのに
ボールを捉えていたのに
突然、息が吸えなくなった。
『……っ?!ハッ…ヒュッ…』
倒れ込んだ衝撃よりも息が苦しくて
ドッドッと耳元で鳴り響く鼓動がうるさくて
集まってきたみんなのシューズを見つめるしかできなくて
目の前が真っ暗になった。
気づいた時には病院にいて
ハッとしてすぐそばにいた母親に試合のことを聞いた
全てを捧げた私の青春はベッドの上で終わっていた。
ドンッ
「あ、すみません…!!」
顔面に走った強い衝撃にハッと我に帰り、すぐにぶつかってしまった相手に謝った。
「あ、全然……」
「あ……カゲヤマ…」
ぶつかったのは烏野の9番、
セッターの
カゲヤマだった。
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作者名:にゃん吉 | 作成日時:2020年1月21日 23時