過去と未来と今の繋がり ページ29
そして次の瞬間、浪士は右斜め後ろに刀を振り上げる。女に体勢を戻す間はない。
次の瞬間。
「………うッ…グッッ…」
女が左手に握った、隠し刀は血を滴らせていた。
「女隊士さん。次は、こっちだよ」
女が十人目を斬ったと同時に、背後から響いた声。
鬼の面を付けた男は、気絶しているのか目を閉じたままの7番隊隊士達の内、一人の喉元に刀を充てがう。
変わらず、笑い続ける男は言った。
「ねぇ、この子達が死んじゃったら君のせいだね。
また同じ過ちを繰り返すの?」
「………やめろ。やめろ…やめろ」
「……この部屋です。沖田隊長」
「いいかお前ら、一匹たりとも逃すんじゃねェぞ」
一番隊隊長が部屋に足を踏み入れた時、目にしたものは刀を構える女。
………それとその背後の浪士。
「……大空!!!」
その声に大空は振り返るが、反応が遅れた。
沖田は咄嗟に抜刀し、走り出す。
が……
その刀はギリギリ間に合わなかった。先に倒れたのは大空の方だった。
呆れたように笑う男は、人質に取っていた隊士を離し刀をも床に投げ捨てた。
「A、過去は未来に何の役にも立たないんだ。ずっと笑ってれば楽なのに。感情なんて持たない方が楽なのに…………わっ!危ないなぁ、刃物を投げつけるなんて。壁に突き刺さってるよ」
「…こりゃ失礼。その腐りきった脳味噌ぶっ刺したら、ちったァましになるかと思ってね」
今さっき、大空を斬りつけた浪士を踏み付けながら、剣の切っ先を男に向ける。
同様に1番隊隊士達も刀を構える。
そして、次期に駆けつけた6番隊も状況を理解し、刀を構えた。
「…ねぇ女隊士さん。君は、僕の知らない表情をするようになった。
だから何だよ、まだ終わるわけにはいかない。
逃げるが勝ちって、言うし」
そういうと男は、背後の開いた窓枠を乗り越える。
そこから下を見下ろしたが、ある筈の姿がない。
何処かへ消えた男を追おうとした隊士達を、6番隊隊長の井上と沖田は引き止めた。
その判断は正しいだろう。
深追いして、目の前にいる他の浪士を逃しては何の意味もない。そして相手はたかが、攘夷浪士一匹。
そう考えるのは至って普通の考え方だ。
「7番隊の隊士達は呼吸は正常。うん、ほんとにただ気絶してるだけだ。大空隊長は……あれ…?」
「沖田隊長が病院に連れて行ったよ」
「あの時さ、あと一瞬でも沖田隊長の判断が遅かったら危なかったよな」
「あぁ…ほんとにな」
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千の歌を歌う人(プロフ) - 十音さん» 返信が遅くなり、すみません!!ご期待に添える自信はあまりないですが、書くのがすごく楽しいので頑張ります!! (2020年2月16日 23時) (レス) id: 88ef43b3c1 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» すごく好きです!(この作品も千さんも)(突然の告白) (2020年1月25日 23時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - 十音さん» すごく驚きました。すごく嬉しいです! (2020年1月25日 12時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» と思ったら1位だよ!!!!おめでとう!!!! (2020年1月19日 1時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» すごっっっ!!もう去年Aなってるんだよなぁ我。あ、関連作品ランキング2位おめでとう!!!!!! (2020年1月19日 0時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2020年1月1日 1時