変わりつつある運命 ページ17
「もしもし、お母さん?うん、分かってる。大丈夫だから。
え、今から?でも………ううん、何でもない」
薄暗く、埃臭い屯所の蔵の中。響く私の声は、雨音に紛れて消える。
気持ち悪いのを我慢して部屋に戻るともう、沖田隊長の姿はなかった。
急いで着物に着替えて、傘を持ち屯所を出た。
仕事は非番の人に代わってもらった。
隊長に電話をかける。謝る為に。
「すみません急用で今日、見廻り行けなくなりました。明日、明日は必ず…」
.
「何時に終わるんでィ」
本当に不器用で嫌になる。
体調悪いんだから無理すんなよ、なんてそんな事も言えない。
「分からないです。すみません」
「気を付けろよ」
「沖田たいちょー優すぅううい!!あ…」
ブチッ
いけね。イラついて切っちまった。
最期に何か言い掛けてたが……どうせ大した事じゃないだろ。
その日の夕方、寝てたら土方くそ野郎の怒鳴り声で起こされた。
「沖田さん、見廻りですよね。私、買い物に行く所で。途中まで一緒に行っていいですか?」←左乃
「荷物持ちですかィ」
雨はもう止んでいた。
風が吹けば、雨上がりのアスファルトの匂いが鼻腔をくすぐる。
所々に出来た水溜まりが、赤く染まる空を写し
行き交う人々は、色取り取りの傘を片手に歩く。
「あと、これAちゃんに。今日はこのまま帰宅するので、お願いします」
「へい分かりやした」
渡されたタオルをポケットに突っ込む。
両手にスーパーの袋を持ち、まだ見廻りから帰るには早いと思い、近くの公園のベンチに座る。
(濡れてたから、渡されたタオルで拭いた)
ありゃ?間に紙…
[押しが肝心!]
何だよ、これ。まぁいっか。
いつもサボる定位置で、頭の後ろで手を組んで目を閉じた。
しばらくすると聞こえた声に、わざと狸寝入りをかます。きっと、後の反応が面白いから。
「可愛い…隊長」
カシャッという音と共に、頬をツンツンされる。
押しが肝心……ねィ。
「盗撮で現行犯逮捕しまさァ」
「えっ、起きてたんですか!?(照れ)」
両手首を掴むと、頬を赤く染めて言い訳をし続けている。一向に黙る気配がない。
仕方ねェ。
「だから…その、通りすが…んッ!?ンん」
「やっと黙ったか」
「今…唇と、唇と、唇が…ごっつんこして…どっこいしょして…」
「無防備だからいけねェんでさァ」
「事故チューですよね…うん。あ、自己中じゃないですよ」
ふざけた事を抜かしやがる。
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千の歌を歌う人(プロフ) - 十音さん» 返信が遅くなり、すみません!!ご期待に添える自信はあまりないですが、書くのがすごく楽しいので頑張ります!! (2020年2月16日 23時) (レス) id: 88ef43b3c1 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» すごく好きです!(この作品も千さんも)(突然の告白) (2020年1月25日 23時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - 十音さん» すごく驚きました。すごく嬉しいです! (2020年1月25日 12時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» と思ったら1位だよ!!!!おめでとう!!!! (2020年1月19日 1時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 千の歌を歌う人さん» すごっっっ!!もう去年Aなってるんだよなぁ我。あ、関連作品ランキング2位おめでとう!!!!!! (2020年1月19日 0時) (レス) id: 29ef4bacad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2020年1月1日 1時