056 side T ページ6
“A?”
“ん?”
“どこにも行くなよ?”
「…剛典が雇ってくれている限り、ね」
思う以上の衝撃。
“雇用主”と“被用者”だと
それ以上の関係性は存在しないと
そう言われたようで
まぁ実際、その通りなんだろうけど
思う以上の衝撃。
余所に引き抜かれるなよ、でもない。
だったら一生雇うよ、でもない。
“Aが居ないと
俺、落ち着かないみたいなんだよね”
言葉を返せない俺に
腕の中で微笑むAの顔が
悲しそうにも、虚しそうにも見えた。
「時間よ、剛典…」
「Aっ」
そこから離れようとするAの腕を
思わず掴んでしまうとか……
「ん?どうしたの?」
「………会食、恵比寿だから」
「…?そう…?」
「お疲れ岩田」
ほら、な?
声を聞いただけで目が泳いでる。
「お疲れ様ですAさん」
「本日もよろしくお願い致します」
なに?その“女”の顔。
いつもの凛とした顔はどこに行ったんだよ。
“あ、Aさんです。俺の秘書の…”
“紹介するよ、俺の仲間!”
後悔していた。
あの日
何となく感じた違和感が疑念に変わった商談初日。
“変わらないね、A”
ミーティングルームの扉が
閉まるか閉まらないかのその瞬間。
臣さんの声が、俺にも届いていた。
“すいません臣さん!お待たせしまし、た?”
泣きそうな顔だった。
何かに脅え、何かに震え、
その顔は
俺と視線が交わった瞬間、安堵に変わっていた。
「失礼します。こんにちは西嶋さん!」
「野田さんっ!こんにちは!」
美鈴先輩がコーヒーを持って来た途端に
わざわざそっちに
「美鈴、このまま入ってくれない?」
「ええ、いいわよ」
解り易く安堵しているくせに肩も落としていた。
「A、資料貸して」
わざと名前で呼べば困った様な顔をして
「どうぞ
形式ばったテンプレートが返って来る。
真っ直ぐ伸びた背筋。
キーボードを叩くヌーディーなネイル。
戦闘服とも言えるはずのスーツは
彼女が纏った時点で品と可憐さを醸し出す。
時折目を細めながら
真剣に画面を見つめるその横顔は
まさに画に描いた様な“出来る大人の女”の顔。
「Aさん、それ見せてくれる?」
その顔をあっさり崩した臣さん。
悔しさと
焦りと
やるせなさをぶつける場所もなく
ぐっとペンを握りしめた。
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空(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます!3も、お付き合い頂ければ嬉しいです^^♪ (2020年6月24日 7時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます!! これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです!お手間とらせてすみません^^;移行になります!よかったらまたよろしくお願いします^^ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもww (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2020年3月8日 16時