Over Rain 2

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上海に赴任してからは

目まぐるしい日々が続き


　“先駆者(パイオニア)になれるんじゃない？”


その言葉を糧に
無我夢中で仕事に没頭した。



逢いたい。

感じたい。



そう思いながら過ごす時間は切なすぎて

ウイスキーを傾ける横顔を思い出しながら
余計にへこんだ夜。



もっと自分に自信があれば
待ってろと言えただろうか。

あんな風に一人で泣かせずに済んだだろうか。



変えられない過去を悔み

情けない自分を悔み






恋は必要ないと結論付けた。






恋愛より仕事が大事。

恋愛なんて極論、装飾品(アクセサリー)だと思う事にする。


そこそこ見栄えが良くて楽しめて
自己陶酔できればそれで満足。


手に入らないなら獲物を変える。
去るならば追わない。
面倒な時は、こちらからフェードアウト。



暗示をかけ続けた結果



気付いた頃には

Aを思い出しながら酒を煽る夜も

無くなっていた。









　


6年後。




「あ、Aさんです。俺の秘書の…」



あの頃と変わらない凛とした佇まい。


いや。


その横顔はあの頃以上に研ぎ澄まされていた。



「ああ！伺ってます。初めまして、登坂です」
「初めまして。岩田がお世話になっております」


何故“初めまして”と言ってしまったのか解らない。

それでもAは
平然と“初めまして”と返して見せた。



絵に描いたような大人の女(・・・・)。

岩田から優秀な秘書が就くと聞いてはいたが
Aなら納得出来る。


きっとあの後も
Aの道を突き進んできたのだろう。





「変わらないね、A」



あの頃の様にその名前を呼び


蘇る記憶の速さと

蘇る感情の速さに


驚いていた。




「広臣は、老けた？」

「ははっ、相変わらずだねー？」



愛おしかったその笑顔にやるせなさが込み上げ

古傷が疼いていた。



せめて。

Aが泣ける場所が存在して欲しい。



「今は？恋人(いいヒト)、居ないの？」


そう願う事は、自分本位な思考だと


「すいません臣さん！お待たせしまし、た？」


そう言わんばかりのタイミングで
岩田がミーティングルームに戻って来た。






　









　






まさか6年後に再会し

一緒に仕事をする事になるとは思わなかった。


「…よっぽどいい女だったんだね、その女性(ひと)」

「まぁ、な」

「もしかして、再燃？」

「…そんなんじゃねーよ」


そんな単純な事じゃ…ないんだよ。

　

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