Scramble LOVER -夜半の約束3

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冷やされ過ぎた瞼が
いよいよ痛くなって来た。


「…ねぇ、痛い」
「どれ。あー、まだ腫れてんな」


真ん前で私を覗き込む隆二に
分かり易く平常心を失った自分に呆れた。

左右の瞼を見比べながら今度は親指でなぞられ
確実に動揺している。


指にも視線にも、その存在にも。



「…もういいよ。今日はどこにも行かないし」
「じゃあ一緒にダラダラすっか」
「なんで一緒になの」
「とりあえずなんか食い物ない？腹減った」



かといって、
幼馴染と過ごす日曜に色気なんて存在しない。



「…パンケーキなら直ぐ出来るよ。作る？」
「いいね、食いたい」
「あ、そうだ、梨も食べる？」
「食べる食べる。てか目、マジで酷いな」
「…うるさい」



確かにやるせなさも感じるけど

それと同時に、
関係性が壊れていなかった事実にも
胸を撫で降ろしている。




　“隆二っ、私明日、…広臣と約束してるの”




あの時、苦しそうに笑った隆二の軌道は
確実に私の唇だった。


私はそれを、受け入れようと思った。


でも、



　“告白して、返事貰ってからにする”



そう言った広臣を思い出して
中途半端に受け入れるべきではないと

咄嗟に思い直した末路が、絶望に繋がった。


あの絶望に比べたら
関係性が壊れなかっただけでも良かったと
そう思うべきなのかもしれない。



「A、なんか観ない？」
「観る！見たかったドラマがあるの」
「ドラマかぁ。アクション系が良かった」
「どうぞ？帰って好きなの観て？」



文句を言ったクセに帰る素振りも見せず
結局、私が見たいと思っていたドラマを
二人で一気見した。


ただ、恋愛ドラマにした事を後悔している。


ラスト一話。
中盤に始まったラブシーン。



「……」



幸か不幸か、
最終話に突入した今現在、

陽も既に落ちていて
部屋の間接照明が無駄に雰囲気を演出している。



「…ハイボール、持ってくるね」
「…うん」



文句を言っていた割には集中している隆二。

居心地が、最高に悪い。



「はい」
「…うん」



やっとエンドロールが流れ
やっとテレビを消す事が出来て
やっと息を付いた。




「…お腹空いたでしょ？なんか作る？」
「…うん」



それでも隆二は

何も映っていないテレビを見つめたまま
ボーっとしている。



「隆二？」
「…うん。…ん？」
「どうしたの？」
「……A、色々考えたんだけどさ」
「うん？」
「……ちょっとこっち来て」



　

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