ゆくあてなき刹那の恋詩 2

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　“…おまえに罪背負わせる訳にはいかない”



「…隆二」

「ははっ、安心しろ？ここ(・・)はAの物だから」



もう一度引き寄せられた胸で聞こえた

トクトクと脈打つ心臓。







隆二は全てを見抜いていた。





私の苦しさや辛さだけではなく


　―このまま流されれもいい、だなんて
　―私は、本当に壊れてしまったんだろうか。


弱さも、

ズルさも。








「じゃーな、A」

「…おやすみ」







テーブルに残されたタンブラーを

ただ見つめていた。




　“それって恋人？”
　“…うん”



どうせなら
その嘘まで見抜いてくれれば良かったのに。

共犯にしてくれても良かったのに。

奪ってくれれば良かったのに。




「……」




私は最低だ。


いつからこんな女になったんだろう。



　“辛い時はさ。俺の事思い出してよ”




だとしたら私は

四六時中

隆二が頭から離れる事がないかもしれない。









週末をどう過ごしたのかも分らないまま


今朝も、アラームが鳴った。





満員電車。

書類の山。




「なんやA、顔死んどるで？」


　―健二郎に会いたくなった。

　―私がどんな顔をしてるのか
　 きっと教えてくれるのに。


どうやら今の私の顔は、死んどるらしい。




二つ向こうの島を
今日は一度も見ていない。


フロアの誰かがその名前を呼び
その名前が聞こえるだけで

心臓が握り締められる感覚だった。




そんな私に舞い降りた癒し(直人さん)。


「A、健二郎、
　時間あったら試験の勉強しない？」

「したいです！」

「あー、したいんすけど…俺
　コレやらないといけなくて…」

「だったらミーティングルーム居るから
　終わったら来な？」

「マジっすか！ありがとうございます！」





向かったミーティングルーム。





「Aどうした？出張、何かあった？」

「直人さん…私、直人さんを好きでいるの
　終わりにしようと思ってます」





　



健二郎がミーティングルームに来たのは
それから40分程経ってからだった。


「すんません、遅くなって」


入室のタイミングを
見計らっていたなんて気付きもせず

そのタイミングを
実は登坂がコントロールしていたなんて

気付きもせず。



　大阪で、何があったの？
　…もう、苦しいんです。



健二郎が入室したタイミングは

涙も乾き
失恋祝いでもしようかなんて

冗談を言い合っていた
そんなタイミングだった。


　

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