【ぬらりひょんの孫】転生・・また転生（女主）

３話 ページ5

『それじゃクロ、おばあちゃん…行ってきますね。』
「わん！」
「ああ。行ってらっしゃい。」

夕暮れ時、家族に見送られながら家を出た私は【絶】を使いながらある場所へと全力疾走だ。
距離はあるが人間の姿でも息切れすることなく走れるので問題はない。
到着してすぐに私は妖怪へと姿を変え仕事着に着替えて厨房へと向かう。
店内からは活気に満ちた声で溢れている。

「いらっしゃいませー！！」
「御来店ありがとうございます！妖怪和風隠食事処【化猫屋】へようこそ！！」

ここは父が働いていた店で娘の私も２年前からバイトとして働かせてもらっている。
人手が足りない場合は接客をすることもあるが、基本的に裏での調理が私の仕事だ。
いつもどおりに働き、休憩していると声をかけられた。

「よう！お疲れさん。」
『お疲れ様です。良太猫さんも休憩ですか？』
「まあな。」

隣りに座った左目の周りが黒い彼はこの店の店主であり、【化猫組】の当主でもある【良太猫】さんだ。
父の友人だった彼は何度も私や祖母の様子を見に訪れてくれていた。
そんな彼を最近悩ませているのはある妖怪だ。

『また…旧鼠が人を？』
「ああ。…このままじゃワシらの街は奴らに支配されちまう。だから、明日にでも本家に…【ぬらりひょん様】に相談しようと思う。」
『…そうですか。』

【ぬらりひょん】とはこの辺りをまとめる【奴良組】の総大将の名で私は話にしか聞いたことがない。
そして…旧鼠は鼠の妖怪で夜の街で主にホストの店を経営しながら人間の女性を食べている。
許可もなく街に現れ人間を襲い続ける彼らを倒すにしても【化猫組】は戦うことが出来ない。
なぜなら【化猫】は超長寿の一部の者を除き…殆どが弱い妖怪なのだ。

(…良太猫さんが…皆が困っているのなら私も力になりたい。戦うことだって…！)

考え事をしていると良太猫さんが私の頭に手を置いて真剣な顔でこちらを見ていた。

「間違ってもお前は奴らに近づくな。出会ったとしても逃げ通せ。……ワシらには仲間が…奴良組がいるから大丈夫だ。分かったな？」
『…はい。』
「よし！いい子だ！」

返事を聞いた彼は私の頭をワシャワシャしながら笑い仕事に戻って行く。
崩された髪と頭に巻いた手ぬぐいを直しながら私も仕事に戻り…終わる頃には深夜を過ぎていたので走って帰った。
途中で見えた問題の店が並ぶ場所は深夜にも関わらずキラキラと光輝いて人々の声が聞こえる。

(…化猫屋の方が私は好きですね。)

続く。

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