それとこれとは別の話 ページ17
「…おい、何してるんだ。」
「？」
「お前だよ、お前。A。ぼーっと突っ立ってると気になるだろ。」
「─そう、ごめん。」
中庭の噴水が吹き上げた水が、陽光を反射して虹色に煌めく。
それを見て、思わず足を止めていたらしい。黒い天使羽の彼─ブラックピット、長いので通称ブラピに声をかけられるまで、全然気づかなかった。
「で。何してんだよ、こんな所で。」
「思い出してた。」
「はあ？何を。」
「1週間前。噴水の水虹色で、綺麗で─こんなのを少し前に見たな、と思って。」
1週間前、という単語に、わかり易い彼の表情が苦々しげに歪んだ。
平和なこの世界が、ほんの7日程前まで存亡の危機に瀕してたなんて、誰も信じないだろう。
大きな窓に、ぺたりと片手をつく。ガラス向こうの虹色の煌めきに幻視する、あの日の明けの空。螺旋を描きながら還っていく灯火達。スピリッツ。
仲間達に後を託されて、私と、彼と、あと一人。3人は、あの強大な敵に挑んだ。
試合とは全く違う、ひたすらに殺意をぶちまけられるようなキーラとダーズの攻撃に戦々恐々としながらも、私は、私達はあれらを倒した。
そうして、あの虹の螺旋を3人で見上げていたのだ。
「─A、ブラックピット。何をしてるんだ？」
「…なんつー偶然だよ。」
「…クラウド？奇遇だね。」
ブラピとは逆方向からの声に振り向けば、彼─クラウドだった。今日はいつものバスターソードは背負っていないようで、彼は酷く身軽そうに見えた。
「ん、ちょっとね。1週間前の。綺麗だったなぁって思い出してたら、ブラピが来て、クラウドが来た。」
「そうか。それは…偶然だろうが、何か運命的なものを感じるな。」
「…クラウド。お前、いつものあの馬鹿でかい剣はどうした？」
馬鹿でかい、という単語に微かにクラウドが眉を上げた。まあ、ブラピの武器は確かに軽そうだけど。
「…例の件で酷使しただろう。メンテナンス中だ。」
「私のガンもメンテ中。エネルギー弾とフレイム打ちすぎてオーバーヒートしながら戦ってた感じだったし。」
今はロボットやシュルクの元で休んでいるであろう愛武器は、よくもまああの激戦を耐えてくれたと思う。
シルバーリップ─彼の武器だ─は、私とクラウド二人の武器がそのザマなのにも関わらず、未だ輝きを失っていない。やっぱり神造武器は違うな。
「…あ、そういえば。」
改めて切り出した私に、二人の怪訝そうな視線が刺さる。
─折角だ。あの日を、振り返ろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗 - マヨナカコープ、ありがとうございます！ジョーカーとウルフ、どちらも好きなキャラなので、ありがとうございます！ (2019年9月28日 20時) (
レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 全然！1年経ったって、(？)いくらでも待ちます！頑張ってください、応援してますよ、チイチさん！ (2019年9月15日 15時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - 麗さん» はい、麗さんこんにちは！(^^) リクエスト有難うございます！喜んでお受けします！ただ、日替わりの消化も済んでいないので完成は少し先かも知れません…どうか気長にお待ち頂ければと…！ (2019年9月15日 13時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - こんにちは(｀・ω・´)麗です(｀・ω・´)……はい、こんにちは！あの、リクでウルフとジョーカーが夜の散歩をしているお話を書いて下さい！それを夢主ちゃんが見ちゃった……的な？ (2019年9月15日 12時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - ロランさん» いえいえ、喜んで頂けたみたいで、とても恐縮です…！ 此方こそリクエスト有難う御座いました！ また機会があれば、よろしくお願いします(^^) (2019年8月21日 16時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チイチ | 作成日時：2019年1月19日 0時
