《ポケモンXY&Z》その救済は、誰が為に。《オリジナル劇場版》 (ページ7)

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Ⅴ．小さな友、そして予感ページ7

ざわ、と森が騒いだ気がした。

「…あら？」

家を出て約10分。いつもより少しだけ急ぎ目に、森の中の近道を駆けていた足を止めた。

前方─レジェルークの中心地へと繋がる小道。…そこに、折れた大木が見事に横たわっていたのです。

「…困りました。ここが使えないとなると、もう遠回りするしか無いのですが…」

近道をする為に態々此方へ回ってきたのに、結局遠回りのルートを使わなければならないとは…不覚。

「うう…結局遅刻になりますかね、これは…でも、仕方ないです…私がもっと早く起きていれば良かったのですし…」

町長さんのジェダイドさんは、普段は温厚な方なのですが…約束に厳しい方でもあり、破った暁には顔は笑顔なのに纏う空気はひんやり…いや業火…？兎に角、物凄く怖い方なのです。

今回はどれ位で開放されるか…と遠い目になりそうになった私の足を、ちょいちょいと何かがつついた。

「え…あら、ニャオニィ？どうしたんですか、奇遇ですね！」

「にぃ、にゃーお！」

「ふふっ…擽ったいですよ、もうっ」

灰色のモコモコとした毛並みに、透き通ったローズクォーツを思わせる桃色の丸い大きな瞳。

…その片方にバツ印の傷がついているそのニャスパーは、この森一番の私のお友達であるニャオニィだと、私は知っているのです。

ひょいと片手で抱えあげられる程、平均よりも小さめであるニャオニィは軽い。片腕にしっかり抱えてあげると、その小さい手でふわふわと顔に触れられて、擽ったさと可愛さに思わず笑いが零れた。

「そうだ、今から私レジェルークに行くんです。…ただ、ちょっと遅れてしまいまして。なのでニャオニィにも来て欲しいな、なんて…」

「に？にゃお！」

「えっ、本当です？まあっ、やっぱりニャオニィは私の一番のお友達です！」

弱虫な私のお願いに、その小さな胸を精一杯反らして小さな手でぽんと「任せろ」とでも言うかのように打って了承したニャオニィに感極まり、思わず頬を擦り寄せた。

ああ…ふわふわです…

「では、早速彼処の道から向かいましょうか！ニャオニィ、頭の上に移動してくれますか？…はい、そこです！」

腕の中から頭上へとちょこちょこ移動したニャオニィは、定位置となった頭のてっぺんにちょこんと嵌り込む。

それを確認してから楽器ケースを抱え直し、いざゆかんと一歩踏み出して─

─うわあぁぁっ！？

「っ！？今の声は…？」

突如聞こえた悲鳴に、ニャオニィが焦るのも構わず、私は進行方向を変えた。