�機ス�せで、温かな。 ページ3
＊
─……、さい、…起きなさい、シエラ…
だれかの、声がきこえていた。
やさしくて、温かで。その声は私の目を覚まそうとするものなのに、絶対的な安心感が、私の瞼をどうにも持ち上げようとしてくれない。
─起きなさい、シエラ。もう朝だ。
まって。まだ…だって、すごく眠いんだもの。
ねえ、あと少しだけだから。良いでしょう？
─…まったく。誰に似たんだ、その寝坊助なところは……私はこんな寝坊助にお前を育てた覚えはないぞ？
響くような声。喉からじゃなくて、頭に、心に直接響いてくるような。
とても重々しくて、どこか先生みたいな緊張感のあるその声が、くすくす、笑いを含む。
ああ、でも。やっぱり、どうにも眠いんだ。
─仕方ないな、シエラは。…まあいいだろう。私も、今日は一日久しぶりにゆるりと休むことにしよう。無論、お前と共に。
…ほんとう？ ほんとうに、××××は今日どこにも行かない？
─そうだとも。私は常に真実を口にする。今日は、お前とこの寝床で休もう。
そっか。…ふふ、ふふふっ…！
やったぁっ、××××と一緒だ！
嬉しくて、今すぐにでも飛び跳ねたくなる。
なのにやっぱり、身体と瞼だけは一向に、ぴくりとも動かないまま。
もどかしくて僅かに身を捩ると、額の辺りを優しく撫ぜる感覚があった。
─…シエラ。私は、いつかお前と離れる事になる。そうでなければ、お前は……
声が途切れる。額を覆う温かくて柔らかい温度はそのままに、××××は大きく溜息を吐いた。
─…いや、今考えることではないな。…ああ、そうだとも。今は只、ゆっくりお休み。私の…私達の、可愛い子供。
とん、とん。一定のリズムで、頭を撫ぜる大きなソレ。
温もりと、安心感と。そして何故だか、ほんの少しの寂寥感。
それが何なのかは、私には分からなかったけれど。
─クリームみたいな、甘くて、柔らかいセカイ。
それに包まれながら、私は深く深く、意識を落とした。
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作者名：チイチ | 作成日時：2018年12月26日 0時
