逢魔時～時を越えた絆～8 (ページ3)

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act20-12 ページ3

「そうだ・・・、私は・・・この時代の人間じゃない・・・」

力なく座り込み、ポツリと呟く

「遠い昔から時を越えて・・・、私は未来に来たんだ・・・」

時を渡った影響で失っていた記憶を、全て取り戻した

「私の本当のお父様は・・・、西行法師様だったんだ・・・！」

体に力が入らないが、心が熱を帯びていく感覚がする

黒姫さんは、私が記憶を取り戻したことが嬉しいのか、無邪気な笑みを浮かべていた

一方で、小山さんと加藤さんは目を見開いている

加藤「Aさんが・・・西行法師の娘・・・！？」

黒姫「そうよ、貴女は西行法師の血を引く唯一人の存在よ、A」

笑っていた黒姫さんは無表情に戻り、脱力する私を見つめた

黒姫「西行の娘、その名前自体は少ないながら表の歴史の文献にも残っている」

西行法師様に娘がいた、という文献は私も目にしたことがある

と言っても、その存在は謎に包まれており、西行の娘について詳しく記してある古文書はなかった

黒姫「けれどその歴史は全て偽りのもの、西行法師が本当の娘を守るため、その存在を知られないよう虚像の娘を歴史に残した」

文献に残っている西行の娘に関する情報は、西行法師様が広めた造言

本当の娘の・・・、私の存在を隠すため・・・

きっとお父様は、私を西行の宿命から解放したかったのだと思う

全てを忘れ、誰からも西行の娘と知られずに、何も背負わずに生きてほしい、と・・・

黒姫「A、貴女こそが・・・西行の娘その人なのよ」

「私が・・・西行の娘・・・」

黒姫「貴女の桁外れの退魔の力も、生粋の西行の血族であるが故」

思い出した事実に衝撃を受け、炎の熱すら感じられない

まだぼんやりする頭の中で、はっきりしていることがある

「私のせいだ・・・、私を助けるために・・・」

私の無事を願い、未来へと送ってくれたお父様

小さな体で命を懸けて私を守ってくれたけーちゃん

「私のせいで・・・お父様が・・・！けーちゃんが・・・！」

小山「・・・・・」

私を逃がしたことで、傷ついてしまった

私が・・・傷つけたようなものだ

「ごめんなさいっ・・・！ごめん・・・なさい・・・！」

いつも守ってもらってばかりで、私は何も出来なかった

強力な退魔の力を持ちながら、何も・・・

俯き、涙が次々と地面に零れ落ちる

本当は私も・・・大切な人を守りたい・・・