逢魔時 〜時を越えた絆〜

act4-1 ページ46

坂の上の広場で会った背の高い男性と目を合わせたまま、私は固まっていた



彼の真紅の大きな上着が、風になびく





ゆっくりと、男性が私に近づいてきた




？「おはよう」



初めて聞いた男性の声


ふと、体の芯が刺激されたような感覚がした



「ご、ごめんなさい、お邪魔してしまって・・・」

？「気にしないで、それより・・・」


男性は私に顔を近づけて、じっと見つめた


綺麗な顔を間近にしたからか、胸が早鐘を打つ




？「もしかして、西行の巫女様？」



それを聞いて、私はようやく平常心を取り戻した


「はい、Aといいます」

？「・・・やっと会えたー！ずっと探してたんだよ！」


先程までの妖艶な雰囲気とは打って変わって、無邪気な笑顔で喜んでいる


「あの、貴方は・・・？」

？「あ、ごめん、自己紹介がまだだったね」


男性は姿勢を正して私の前に立った




？「初めまして、小山慶一郎です、西行の神主様から巫女様を守るために遣わされたんだ」


「お父様が・・・、では、手越さんと増田さんの仲間ですか？」

小山「手越とまっすーを知ってるんだ！てか、流石にもう会ってるか」

「はい、お二人とも神社にいます」

小山「遅くなってごめんね・・・」

「いえ、ところで、ここで何を？」

小山「あー・・・、えっと・・・」


答えづらいのか、小山さんは私から視線を外した


「・・・すみません、答えられないのならば大丈夫ですので」

小山「ち、違う違う！答えられるけど、たいした理由じゃないんだ」

「？」

小山「俺さ、空を・・・、正確には雲を眺めるのが好きなんだ」

「え・・・」

小山「どうしてだろうな・・・、どんなに手を伸ばしても、体をばたつかせても届かないのに、追ってしまうように見ているんだ」

「・・・・・」

小山「まるで境目があるように、あるいは風に押し返されるように、いつまでも届かない、追いつけない・・・」



独特な表現だな、と思いながらも、なぜか彼の言っていることが分かる気がする


小山「・・・て、何言ってるんだろう、俺、おかしいよな」

「いえ、何となく・・・分かります、私も・・・雲を見ているのが好きなので」

小山「ほんとに！？凄い偶然」

「ですね」


そんな話をしながら笑っていると、急に小山さんは優しい瞳で私を真っ直ぐ見据えた



小山「Aちゃんの白い色、空を泳ぐ雲みたい、・・・綺麗だよ」



体温が一気に上がり、私は体ごと小山さんから視線を外した

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