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cs「……せっかくだしデートでもする？」
繋がれた指先から伝わる微熱が、曖昧に心を溶かしていく。
お互いがお互いの顔を見ないのは、上手く笑えないのを解っているから。
不可思議なおままごとに巻き込まれ、無しになったカレンダーの書き込み。
「今日、遊園地行く予定だったもんね」
一昨日の夜に焦がれていた。昨日木陰で出会った彼の手元を見て、思わず吹き出してしまったのが記憶に新しくて。だって見るからに重たげなモーニングスターを揺らして遊園地デートなんて、違和感が働きすぎている。
「遊園地行く途中に動物園とかあるけど行ってみる？」
「動物いるのかなぁ」
「いないだろうなぁ」
赤い水溜まりと肉塊からは目を背け、込み上げる吐き気を押し戻す。
くしゃりとよれた地図の端。掠れる他人の血液が、首に透明な縄を巻き付けた。
冷たい皮膚を撫でるように、ゆっくりと息を止められていく。今すぐにでも死ねたらいいのに、誰かが殺してくれたらいいのに。
思考すらも億劫で、でもどうせ全部が無くなるのなら、ひとつでも多く想い出がほしかった。
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gk「ふたりともはずれかぁ」
彼の手には結束バンド。私の手には先の丸いハサミ。ロープや裁ち鋏であればもう少し活用法はあったかもしれないけど、これじゃどうにも役立ちそうにない。
「ホームセンターとかになんかないかな」
「Aに会う前に寄ったけど何もなかったし人めっちゃいた」
「じゃあだめだ」
「ここから近くて武器っぽいのが残ってそうなところ……」
「あ、あの看板水族館までって書いてある」
「おー、餌捌く包丁とかないかな」
そんな淡い期待と共に、隠れながら水族館へと向かう。
錆びて塗装が落ちたイルカの像を通り過ぎると、半壊した建造物が見えた。
「私が知ってる水族館はもうちょっと暗いはずなんだけど」
「2階も青空も見えちゃってるねぇ」
武器は無かった代わりに、細い通路の奥にあったくらげコーナーが室内として形を保っていた。
お土産屋コーナーで見つけたしろくまを枕にして、からっぽの水槽を眺めながら0時のアナウンスを聞き流す。
拾った瓦礫を持って歩いていく彼にも、壁越しに聞こえる頭蓋の砕ける音にも、静かに眠ったふりをして。
目が覚めたら彼に電話をかけよう。きっとこんなの、夢だから。
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すいみん。(プロフ) - こんな夜に死ぬ程泣いてしまいました。起きる頃には目が腫れていそうです。背景描写や細やかな心情描写が繊細で儚いのに粘っこく心に残る小説でした。解像度も高く本当に言ってそうorやってそうな行動ばかりで脱帽です。無理なさらず更新頑張ってください！！ (1月13日 23時) (
レス) @page20 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
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