検索窓
今日:10 hit、昨日:9 hit、合計:64,542 hit

銀ノ魂篇38ー涙ー ページ39

ー松陽side

あぁ、やはり人間は繰り返す。

虚が人間を滅ぼそうとした気持ちも分かってしまうくらい酷い有様だ。

「アンタ、先生なんだろ。」

泣いているのか笑っているのか分からない。そんな表情で私の弟子はボロボロに傷ついたその体を引きずってこちらに向かう。

「アイツだってあんたに会いたがってた。」

アイツとは誰のことなのだろうか。

いつも憎まれ口ばかり叩いていた生意気で可愛い天パのあの子か。

頭が良く真面目だがどこか抜けているあの子か。

無愛想だが私を想い続けてくれたあの子か。



………あの子は、Aは虚に会いたがっている。

今再開したところでガッカリされるのではないか。

そんな情けない心配が心を満たす。

こんな時まであの子が好きな事には変わらないのだなぁ。案外虚と趣味が合うのかもしれませんね。

なんてふざけたことを考えている間にも建物の壁は崩れ、晋助は苦しそうに呼吸をしている。

「私は君を救うことは出来ない。」

1番言いたくなくて、1番言わなければならなかった事。

「私にも…誰かが救えると思っていた。その危険性に気付きもせずに。」

化け物からいち早く抜け出したくて、人を救えば抜け出せるのではないかと自分勝手な考えで朧に血を与えた。

「傲慢以外の何ものでもなかった。」

結局は何も護れず、挙句の果てに大切な弟子を巻き込んだ。

「今更江戸の人々を何人救おうと、弟子を…本当に護りたかった者達を私は誰一人救えなかったのだから。」

頬を熱いものが伝った。

鉄格子の中から見たAの泣き顔が浮かんでは消える。

私は最後の最期まであの子を泣かせてしまった。

「すまない、私は……私は…………」




腹に強い衝撃を感じた。





吐き出した息とともに出たのは言葉ではなく小さく呻く自分の声。






ゆっくりと目線を下げると静かに光るそれが、私の身体を貫いているのが見えた。

銀ノ魂篇39ー使命ー→←銀ノ魂篇37ー先生ー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
208人がお気に入り
設定タグ: , 吉田松陽 , 銀魂
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れい(プロフ) - レミリアさん» 初めて見た虚の小説が私の小説だったなんて、とても嬉しいです!最後まで見ていただき本当にありがとうございました! (2020年6月17日 22時) (レス) id: 083c2e3efe (このIDを非表示/違反報告)
レミリア(プロフ) - 完結おめでとうございます!ハラハラドキドキさせて頂いておりました!虚の小説を始めて見たのがこれでよかったと思っています!本当にお疲れ様でした! (2020年6月17日 17時) (レス) id: 0a87aae102 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ゆるさん» ありがとうございます!のろのろ更新になってしまうと思いますが、そろそろ完結なので最後までがんばります! (2020年6月9日 20時) (レス) id: 083c2e3efe (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - 更新楽しみにしてます! (2020年6月9日 12時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ながのけんさん» 返信遅れてすみません!好きと言ってもらえて本当に嬉しいです!励みになります!!これからも更新していくのでよろしくお願いします! (2019年5月30日 19時) (レス) id: ab40bf5b47 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:れい | 作成日時:2018年8月23日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。