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幾松さん ページ37

「へぇ...それで銀さんの記憶は無事に戻ったと...」


「まァ...そんな感じですね」


平日の昼下がり、お客さんのいない『北斗心軒』で幾松さんとわたしのおしゃべりが始まる。


「やっぱりあの万事屋の2人って只者じゃなかったのね〜」


「本当に新八くんと神楽ちゃんからは学ばなくちゃいけないことが多いなって思います」


あの2人無しには銀さんの記憶は戻らなかったと思う。


まぁ...あの現場に真選組まで参戦してたのはビックリだったけど...


「まァ、Aには無いモノを揃えた2人よね。でもあんまり気にしすぎるんじゃないよ!Aは考え込んで拗らせちゃうところがあるんだから!」


「そ、そうですね...」


幾松さんは鋭い...

そして、わたしが今1番求めてる言葉をくれる。

幾松さんはわたしの憧れの女性だ...


「さてと!じゃあ夜のピークに向けて下準備でもはじめよっか!」


幾松さんはそう言って立ち上がった。

わたしも「ハイ!」と言って立ち上がると、


_____ガララッ


と、お客さんが...


「よォ〜いくまっちゃん!」


...いや、お客さんじゃない。


「あれれ〜珍しくAちゃんもいるじゃないのォ」


幾松さんの亡くなった旦那さんの弟とその仲間が来た...


「また何しに来たのよ」


幾松さんは((下がってな))と言わんばかりにわたしの手を引いた。


「今日は時間もねェから単刀直入に言うが、金よこせよ」


!!!!!!


「アンタ何言っ.」

「今日はAもいるんだ、これだけ渡すからもう帰ってくれ...」


わたしが口を挟もうとすると、すかさず幾松さんがわたしの言葉を遮った。


「今日は可愛い "妹" がいるからってやけに素直だなァ...まっコレがもらえりゃ優しい弟は文句言わねーんだよ」


その男はそう言って楽しげに札束を数えた。


「...もォこれで最後よ...私は大吾との約束を守り通す為にここでラーメン屋やってんだ...元々アンタらみたいな奴に渡す金なんて無いんだから」


幾松さんにそう言われた男は


「幾松よォ、いつも言ってんだろ?俺たち攘夷志士には金が必要なんだって。俺は兄貴の.」


と言いかけたけど、


「うるさい!金は渡したんだ、早く出ていってくれ!」


幾松さんが男の言葉を遮った。


「まったく兄貴も威勢のいい女を捕まえてたもんだぜ。今日はここらで引くとすらァ!んじゃ、Aちゃんもまたね〜」


_____ピシャンッ




「A、ごめんよ」


2人きりの店内に幾松さんの悲しい声が響いた。

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作者名:りず | 作成日時:2021年5月5日 23時

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