（20.） ページ25
20.
.
樹は高校生活最後のクリスマスをバイトに費やしていた。
クリスマスのせいでカップルが多いことに少々腹を立てながらも、3ヶ月ほど前から掛け持ちで始めたあめいずでのバイトを難なくこなす。
｢樹さんは彼女とかいないんですかぁ?｣
そう話しかけてきたのはバイト仲間の女の子だ。
流行りのメイクとクルクルの髪、今どきの女子高生のお手本のような彼女のことが、樹は苦手だった。
｢いないよ｣
なるべく話が広がらないよう、樹は一言で返事をする。
｢えー!樹さんモテそうなのに〜｣
(…うざ)
樹は心の声を必死に抑え、無言を貫いた。
しかし、その冷たい態度が彼女を熱くさせることを鈍感な樹は知らない。
｢じゃあ〜、今夜、空いてるってことですかぁ?｣
｢…まぁ｣
｢それならバイト終わったら、私とデートしましょーよ!｣
｢いや…｣
｢今夜だけでいいんで!｣
｢ほんと、勘弁…｣
｢つれないなぁ…もしかしてあれですか?好きな子がいたりするんですかぁ?｣
｢そうじゃ、ないけど｣
そんなことを言いながら、樹はAのことを思い出していた。
きっと今頃大我と一緒にいるであろうAを思い浮かべ、胸が少しチクッと痛んだ。
大我とAの恋を応援していたはずなのに、いつの間にかそんなふたりを見ることが辛くなっていた。
それはきっと、自分には恋人がいないから妬んでいるのだ、と樹は自分に言い聞かせ、そんな自分の汚い感情を嫌った。
｢樹さん、もうすぐ青春終わっちゃうんですよ?恋しないと…後悔しますよ｣
彼女はそう言い残し、オーダーをとりに行ってしまった。
いつもはうざったいことしか言わない彼女のはずなのに、今の言葉は樹の胸に突き刺さった。
(後悔する…かぁ)
自分の気持ちがわからないから、よけい心に残り続けるAへの気持ちの消し方を誰かに教えて欲しいと樹は心から願った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
