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土井side
今私は、おそらく自室にいる。
どうやって戻ってきたのか覚えていない。
火薬庫にいたはずなのだが。
今日はAくんと6年生が鬼ごっこをしていた。
実戦さながらの動きをしてくれるので、見ているだけでも下級生たちの良い勉強になっていたと思う。
それぞれ学園中を動き回り、暫くして彼女は火薬庫の側で落ち着くことにしたらしい。
火薬庫の片付けをしていた私は、すぐそこにAくんがいたので内心嬉しかった。
頬の怪我を教えたとき、えぇ!と言いながらも笑顔で話す彼女はとても楽しそうだった。
あぁ、こんなに無邪気になるんだ。
同年代の彼らと一緒にいると、こんなにも。
だからあのとき。
伊作が彼女の頬に絆創膏を貼ったとき。
彼女の頭を当たり前のように撫でたとき。
それはもうショックだった。
ああ、こんなにも当たり前に、彼らは何も躊躇う事なく彼女の名前を呼び、彼女に触れられるのだ、と。
ショックを受けた私の脳は暫く機能しなくなってしまったし身体も動かなくなって。
そこからあまり覚えていない。
たぶん壁かな、頭を打ったと思う。
Aくんは知らない。
彼女の頭に置いた手が、本当はどんなに震えていたか。どんなに勇気を出したかを。
芽生えて認めざるを得なくなった、この感情のことを。
知らないのだ。
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作者名:はな | 作成日時:2020年12月14日 12時